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映画ノート

危険がいっぱい

 
危険がいっぱい
Les Felins
 
【あらすじ】
いかさまギャンブラーのマルクは、マフィアのボスの女に手を出したことから、組織に追われる身に。逃亡先のシェルターで富豪の未亡人に拾われ、お抱え運転手として夫人とその従妹メリンダの暮らす屋敷に身を置くことになるが・・

マルクに扮するのは若きアラン・ドロン
ドロンとルネ・クレマン再タッグで、邦題も『太陽がいっぱい』の影響を見て取れる本作ですが、ドロンの役どころはリプリーとはかなり違ってます。
同じ根無し草でもこちらは、今が楽しければそれでいいという、あっけらかんのチンピラ風情。しかし男前故、女性陣が黙っちゃいない。
ギャングの情婦にもおそらく惚れられたのでしょうし、逃亡先の未亡人宅でもジェーン・フォンダ演じるメリンダに言い寄られる始末。
 
ガキには興味ないとばかり、メリンダのお色気攻勢をてきとーにかわすマルク。どうやら彼はクールビューティの未亡人バーバラの方を気に入った様子。
しかしバーバラには秘密があり、マルクには新たな危険が差し迫ることになるんですね。
 
 
ギャングに拷問を受けるシーンに始まって、そこからの逃亡劇。
未亡人の暮らす屋敷に着いてからは第二ラウンド開始。
屋敷の「謎」と「秘密」をジワジワ明かし、驚きのラストになだれ込むわけですが、いやはや、これは面白かった。
 
 
感心するのは99分というコンパクトな作りの中に、キャストの内面がしっかり描かれていること。マルクが自由を求める男だとわかっているから、そしてマルクが本当の悪党でないことも知っているから、あの結末が物凄い衝撃となって効いてくるわけです。
 
 
監督はドロンを奈落の底に落とすのを楽しんでる?(笑)
でもラロ・シフリンの軽快なジャズが絶妙なリズムを刻み、悲惨だけどどこかコミカルでシニカルな可笑しみを生んでいる。
同じ奈落の底に落とし込むのでも『太陽がいっぱい』とはトーンがまるで違うわけで、監督の多彩な演出手腕にも恐れ入りました。
 
 
ドロンにジェーン・フォンダ、バーバラ役のローラ・オルブライトも美しく、眼福眼福。
大満足の一本でした。
 
 
猫かわゆす
 
 
 

映画データ
製作年:1964年
製作国:フランス
監督/脚本:ルネ・クレマン
ローラ・オルブライト
アンドレ・オウマンスキー
ソレル・ブーク
アーサー・ハワード