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映画ノート

【映画】追想(2018)

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はてなブログ初映画記事投稿は、少し新しめの一本を。
新婚旅行先のチェジル・ビーチで起きた出来事を、過去の回想を交え描く『追想
『つぐない』のイアン・マキューアンの小説『初夜』の映画化で、マキューアン自身が脚本を書き、BBCドラマ『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』の3シーズンを手掛けたドミニク・クックがメガホンを取りました。

 

追想(2018)
On Chesil Beach

 【あらすじと感想】

新婚旅行でチェジル・ビーチのホテルにやってきたのは
楽家のフローレンス(シアーシャ・ローナン)と社会学者になることを夢見るエドワード(ビリー・ハウル)。
食事もそこそこに「初夜」に突入しますが、互いに初体験の二人
うまく事が運びません。

 

ベッドの上での奮闘は滑稽で、変にリアルなのはキワモノ的にも感じてしまうところ。
しかし、出会いや家族との交流がフラッシュバック的にさしこまれ
2人がいかに絆を深めてきたかがわかるから、単にイタい話じゃなくなってくる。

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すみません。早々に断っておきますが、今回は基本ネタバレで書いていきます。
未見の方はご注意ください。


中盤、フローレンスのトラウマに関わる部分が描かれると
彼女が性に抵抗を感じる理由もわかってきます。
不安や恐怖に抗いながらも、愛する夫に身を捧げようと頑張るフローレンス
しかし夫にその思いは通じず、彼は不器用な自分と不寛容な妻の両方にいら立ち
挙式後わずか6時間で、2人の間に決定的な溝ができてしまうんですよね。

殿方にはきっとエドワードの気持ちは理解できるでしょう。
しかし、その結末にただただ切なさが募るのです。


映画、小説とも原題はOn Chesil Beach『チェジル・ビーチにて』
実は、観終わってすぐに、映画のはじめに戻って見直してしまいました。

もしかして、ホテルへと続く海辺を歩く冒頭のシーンは、エンディングからの続き
「実現しなかった幸せな過去」を描いていたんじゃなかったのか
そう思ったんです。が、違いました。

まぁ、そうなると『ラ・ラ・ランド』の二番煎じと言われてしまうだろうから、違って正解なんでしょうが

あの時、フローレンスの申し出に応え、一緒にホテルに戻っていたら・・
2人でちゃんと話し合うことができていたなら、違った人生だったろうと思うと泣けて仕方なかったです。

でも三回目観て、少し見方が変わりました。
長い人生、失敗もあるし方向転換を余儀なくされることもある
でも、それが不幸だとは必ずしも言えないのですよね。

この作品はきっと、分かり合えなかったことを嘆いたり、どちらかを責めたりする映画じゃなくて
その時々を懸命に生きる人々への賛歌
恋することの喜びや青春の煌き、人を思いやるやさしさなどを描いた文学的な作品だと思いました。

シアーシャは老けメイク姿でさえ品よく美しい。
逆光を多用したイギリスの風景は絵葉書のようでもあり
クラシックとロックを織り交ぜた音楽も心地よい
目に耳に、心に響く一本でした。

 

映画データ
製作年:2018年
製作国:イギリス
監督:ドミニク・クック
脚本:イアン・マキューアン
出演:シアーシャ・ローナン
    ビリー・ハウル
    アンヌ=マリー・ダフ
    エイドリアン・スカーボロ
    エミリー・ワトソン
    サミュエル・ウェスト