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映画ノート

【映画】リグレッション

リグレッション(2015)
Regression

【あらすじと感想】
1990年。ミネソタ州の小さな街で17歳の娘アンジェラに性的暴行を加えた疑いで父親が逮捕される。事件のことは憶えていないとしながらも、犯行を認めるという不可思議な行動をとる父親に困惑した警察は、心理学者の協力を得て事件の真相を探ろうとするが・・

 

アザーズ』『海を飛ぶ夢』のアレハンドロ・アメナーバル監督によるサイコサスペンス。
90年代に多く起きた事件にインスパイアされて作られたとする本作は、娘の暴行事件の裏に何があるのかを、オカルト混じりに描き出します。


タイトルのregressionというのは心理学的に「退行」という意味だとか。
前に進むのがプログレスで、そのと逆方向という感じかな。
本作で、警察に協力を求められた心理学者が行うのが「リグレッション(退行催眠)」という精神分析
過去のある時のシーンを視覚化させ、事件の全容を知ることが目的でしたが
それによって見えてくるのが悪魔崇拝に関わる一家のおぞましい実態。

捜査を担当する刑事までもが恐ろしい幻覚に襲われはじめるのがみそで
イーサン・ホーク演じるブルース刑事は精神的に追い詰められていくんですね。
イーサンはこういうのやらせたら本当にうまいよね。

実は先日、悪魔崇拝を描く『へレディタリー/継承』というホラー作品を観て、
その流れでつい本作に手を伸ばしたんですが、どっぷり濃厚な『へレディタリー』を観た後では、肩透かしを食らった気分になりました。


以下、少しネタバレになるので、これから観ようと思う方はご注意ください。

私がなぜこの映画に肩透かしを食らったかは
本作に『へレディタリー』的な悪魔崇拝映画を期待したからにほかなりません。

実際映画は「退行催眠」で見えてくるものに加え、刑事の幻覚など、悪魔崇拝をめぐる映像であふれています。
ところがですね、終盤どんでん返し的展開となり、いきなり頭の切り替えを余儀なくされ・・・
ポカーン、というか、肩透かしとなるのですよ。
自分の中でまだ悪魔のお話真っ最中なのに。

ま でも、始めから悪魔崇拝の話と思わずに観ていたら良かったのかもしれません。
決めつけが判断を鈍らせるというのは、映画の主題の一つでもあります。
人の記憶も科学も、実はとても脆いもの
「こうして集団ヒステリーは起きるのだ」と示して見せるなかなか知的な作品でした。

一方、事件の真相を解くミステリーとしては、アイディアとしては面白いものの
終盤刑事がシャーロックのように謎を唐突に解く流れは、いただけない。
しかも17歳のアンジェラが全て仕組んだとするには無理があって
そうはいってもやっぱり悪魔が関わってるでしょ?と、エンドロールを眺めながらまだ引きずってしまった。

アンジェラを知的なエマ・ワトソンに演じさせたのはよかったですけどね。
天使に見えて、必ずしもそうではない
意外性も含め、楽しみどころはありました。

 

映画データ
製作年:2015年
製作国:フランス/ドイツ
監督 /脚本: アレハンドロ・アメナーバル
出演:イーサン・ホーク
   エマ・ワトソン
   デヴィッド・シューリス
   ロテール・ブリュトー
   デイル・ディッキー
   ダーヴィッド・デンシック