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映画ノート

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』タランティーノの郷愁

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)

Once Upon a Time in Hollywood

 

【あらすじ】

かつてテレビスターとして名を馳せた俳優リック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)も今は落ち目。専属スタントマンとしてリックを支えてきたクリフ・ブース(ブラッド・ピット)も苦しい状況に置かれている。そんな中、隣に新進の映画監督ロマン・ポランスキーと妻シャロン・テートマーゴット・ロビー)の夫妻が越してくる。

 

【感想】

クエンティン・タランティーノが監督し、アカデミー賞の10部門にノミネート、ブラッド・ピット助演男優賞を受賞した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(以下『ワンハリ』で(汗))ようやく観ました。

 

彩度を落としたロスの景色に映し出されるレストランの看板、大きなアメ車にヒッピー族。古い映画のポスターや劇中劇中のこんな構図にも、タランティーノの郷愁を思わせます。

 

役者では、まずはディカプリオとブラピという豪華すぎるコンビが楽しい。

ディカプリオ演じるのは往年のテレビスターだけれど、今や新しいスターを引き立てる悪役しか回ってこない落ち目の役者。時代に取り残され、実力もそこそこありプライドもあるけれど、仕事は激減。

このままでは豪華な家を手放さなければならないばかりか、専属スタントも養えない状況に、小ばかにしていたイタリアの西部劇にやむなく出演することを決めるリック。子役に演技を褒められ涙するあたりの悲哀は、現実のレオにリンクしてるようで切なかったり。

 

一方のブラピの、ムッキムキの筋肉に常に準備万端のプロ意識をにじませつつも、華を消し、影のようにリックを支えるスタントダブルとしての佇まいが素晴らしい。レオとの掛け合いはテンポ的に噛み合わないけれど、互いを信頼して大事にしてるのがよく伝わって愛しい。ワンコとの関係も忘れちゃいけない。至高のバディぶりにニマニマが止まりません。

 

全部は分からなかったけれど、マックイーンやブルース・リーなど名前を知った役者が出てくるのも楽しい。

 

そして、もう一人重要な登場人物はマーゴット・ロビー演じるシャロン・テートでしょう。事件のことは知ってはいたけれど、彼女を見たことあるのは『ポランスキーの吸血鬼』の中だけで、その私生活や、彼女の性格についてもまるで知りません。そのシャロンが『ワンハリ』の中では自分の出演作を誇らしげに映画館で鑑賞し、楽しそうにダンスし、幸せそうな妊婦の顔を見せてくれたりする。

 

これこそが映画のマジックであり、タランティーノの古き良き時代への郷愁なのかなもしれませんね。

 

終盤、緊張感に手に汗を握ることになるのだけど、『イングロリアス・バスターズ』を彷彿とさせる展開はタランティーノ流のリベンジであり優しさでもあるのでしょう。

ポランスキーの反応を知りたいとも思ったな。

 

ともあれ、タランティーノのやりたいことをいっぱい感じた一本でした。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド