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映画ノート

【映画】『アド・アストラ』父を訪ねて三千里・・なんてもんじゃない

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アド・アストラ(2019)
Ad Astra

【あらすじ】
近い未来。ロイは地球外知的生命体の探求に人生を捧げた父を見て育ち、自身も同じ道を選ぶ。しかし、その父は探索に旅立ってから16年後、地球から43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となってしまう。その後、エリート宇宙飛行士として活躍するロイに、軍上層部から「君の父親は生きている」という驚くべき事実がもたらされる。さらに、父が太陽系を滅ぼしかねない通称“リマ計画"に関わっているという。父の謎を追いかけて、ロイも宇宙へと旅立つが……。(amazonより)

【感想】 

ブラピ演じる宇宙飛行士ロイが、宇宙で消息を絶った父を探しに遠く海王星の彼方までもいくという近未来SFです。
タイトルのアド・アストラとはラテン語で「星々へ」という意味らしい。

やたら眠くなるとか、リアリティがないとか、
父と息子の問題をわざわざ宇宙空間を舞台にしなくてもいいんじゃないかとか
あまり良い評判は聞いてなかったですが、あらなに面白いじゃないですか。

やたら眠くなるか?
まぁね、なんせ静かな映画ですよ。
宇宙飛行ものというとスタートレックとかアポロ13とか、それなりのスタッフが必要と思いがちですが、本作の場合、ロケット内にブラピお一人という状況が多く
台詞の大半もブラピの心の声とか、管制への無線連絡という風で
字幕を読むという仕事が少ない分、眠くなる人が多いのはわかります。

リアリティ?
確かに、そんなところから入れるん?とか
その盾みたいなので宇宙の飛来物めいっぱい受けてもまっすぐ飛べるん?とか
いくつかツッコミどころはあるんですが、宇宙飛行のあれこれに詳しくないもので、そのあたりのリアリティについては語れません。

父と息子の問題をわざわざ宇宙空間で・・
そこはいいでしょうよ。
舞台設定をどうするかは作り手の勝手。
本作は父に起きたことを知ることで自分を見つめなおす映画であり
そのためには長い時間も必要だったかもしれません。

部屋で欝々とする映画を見せられるよりは、宇宙空間の素晴らしい映像を堪能したほうがいい。
やがては月旅行もこんなスタイルになるんだとか、資源を求める紛争は宇宙にまで及ぶのかとか、予測される近未来の姿に興味を持てたし
アトラクション的に挿入されるプチトラブルも程よいおめざです。

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こういうテーマの場合、本当なら思春期の男の子が主人公となるところでしょうけど
熟達した宇宙飛行士でなければならないからか、はたまた監督とお友達という間柄だからなのか、主役はブラピが務めておりまして、これも正解。
宇宙空間ぼっち映画ではマット・デイモンもかなりいい線いってたわけですが
中年だろうが台詞が少なかろうが、美しい瞳と皺だけでもヘルメットから魅力を溢れさせてしまうブラピにはもはや誰もかないません。
苦悩するその表情を延々眺められることが幸せというもので
結果的に自己中になっちゃったねと思う部分も、リアリティ不足でさえ、楽しめる余裕を持てるのですよ。

ラストシーン
差し出された手に触れる瞬間、ロイの人生はここから始めるのだと
赤ん坊のようなおぼつかなさで歩き始める姿に涙がにじんだのでした。

 

映画データ

製作年:2019年
製作国:アメリ
監督:ジェームズ・グレイ
脚本:ジェームズ・グレイ/イーサン・グロス
出演:ブラッド・ピットトミー・リー・ジョーンズ/ルース・ネッガ/リヴ・タイラードナルド・サザーランド