しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】トランス・ワールド

最近観た映画の感想がたまってきてしまったので、ちゃちゃっと簡単に。

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トランス・ワールド(2011)
Enter Nowhere

【あらすじと感想】
ガス欠で、助けを呼びに行った夫ともはぐれ、森の中の山小屋に迷い込んだサマンサは、トムと名乗る青年と出会う。
トムも車の故障で3日前に山小屋にたどり着いていたのだ。外の様子をみにトム出ている間、小屋の外にジョディという女性が倒れているのをサマンサが発見。
寒さと飢えのため3人は協力し合い、次第に打ち解けていくが、次第に彼らは事態の奇妙さに気づくことになり・・・


見知らぬ森にたどり着いた3人の男女が遭遇する、摩訶不思議な世界を描くジャック・ヘラー監督によるミステリー・スリラーです。

まず不思議なのは、小屋を出て遠くに行ったはずなのに、なぜかまた元の場所に戻ってしまうなど、この森は何かが変なのです。
しかも変なのは森だけでないのね。
そもそも3人は何故その場にたどり着いたのか。
特に冒頭でコンビニ強盗やってたジョディが、小屋の前で倒れていたのは不思議だし
足が折れたと言ってたトムは何故歩けるのか?キャサリンの夫はどこに消えたのか。
3人それぞれの夢に出てくるシーンは何を意味しているのか・・等、散りばめられた不可思議に翻弄されます。

そんな中、トムがジョディに言う「どうせ外に出れば凍死するんだ。その古めかしい上着は置いていけ。サマンサに着せる」
という言葉は謎を紐解くきっかけとなる台詞でしょう。
気づかなかったけどジョディのダウンジャケットは確かにデザインが・・(汗)

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そこで、なんとなく感じていた、サマンサの古風なヘアスタイルや、煙草や車のレトロ感も気になってくる。
少しネタバレすると、この3人、実は異なる時代を生きる面々で
3人もやがてそのことに気づき、ある行動を起こすのです。

これ以上のネタバレはやめておきますが
『世にも不思議な物語』的な奇想天外な物語は飽きさせないし
役者もそれぞれいい演技で楽しませてくれます。

おそらくは低予算でしょうが、3人が入り込んでしまった異空間の世界観も面白く、
邦題の『トランス・ワールド』も悪くない。

色んな映画にオマージュを捧げてる感じも映画ファンには嬉しいところ。
コンビニ強盗のシーンは『パルプ・フィクション』、トムが斧を引きずりながら登場するシーンは『クレイジーズ』
森の中で得体のしれない相手に襲われるのはジョディの台詞にもあるけど『脱出』。
コンビニ店長の役割というか、全体のプロット自体は『天使がくれた時間』。『素晴らしき哉、人生!』もそうかな。

こういう作品で何故?というのは野暮なのですが、「引き金」になるものを少し明かしてくれても良かったかも。
まぁ、コンビニの店長(またはそこの金庫)が異空間への入り口的な役割を担っていたのは想像できるからいいか。

少し哀愁を帯びたラストシーンに、サマンサとジョディは潜在的な記憶を残していて
いつかジョディが子供を産むときには、トムと名付けて幸せに育てて欲しいと願う自分がいましたよ。

こういう余韻を持たせてくれるところも実にいい。意外な秀作君でした。

 

映画データ
製作年:2011年
製作国:アメリ
監督:ジャック・ヘラー
脚本:ショーン・クリステンセン/ジェイソン・ドラン
出演:サラ・パクストン,スコット・イーストウッド, キャサリン・ウォーターストン,ショーン・サイポス