しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】ミッドナイト・スカイ

今年の抱負の二つ目は、新しめの秀作も観ていくこと。
最近はアカデミー賞Netflixオリジナル作品が多くノミネートされるようになったのでNetflixに再加入することにしました。コロナの影響で4月に延期された賞受賞式までに話題作は観ていきたいと思います。

まずはジョージ・クルーニーが監督&主演をつとめたSF『ミッドナイト・スカイ』から。


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ミッドナイト・スカイ(2020)
The Midnight Sky

【ストーリー】
2049年。急速に大気汚染が拡がり、地球は滅亡を目前にしていた。
人々が脱出に向け避難を開始する中、病に侵された科学者オーガスティン(ジョージ・クルーニー)は一人北極の展望台に残り、帰還途中の宇宙飛行士に地球には戻れないことを伝えようとする・・

リリー・ブルックスダルトン原作のSF小説『世界の終わりの天文台』の映画化です。
映画の中で急速に進む大気汚染の原因を明確に示唆してはいませんが、地球温暖化か核戦争か・・
いずれにしてもこのディストピアな近未来を絵空事とは思えない状況になってきました。

死にいく地球を捨てる日が来ることを予測し、地球外に人類が生息可能なコロニーを見つけることを研究してきた科学者がジョージ・クルーニー扮するオーガスティンです。

しかし研究に没頭するあまり、家族との繋がりを失ってしまった彼は今、滅びゆく地球上で孤独な最期を迎えようとしています。

そんな彼の最後の使命は、地球外のコロニーを探索する役割を担った宇宙船アイテルに、地球には戻れないことを伝えること。少しでもクリアな交信環境を求めブリザードの中探索するオーガスティン。
映画は彼の挑戦を、地球へ帰還途中の宇宙船の様子を交え描くつくりです。

地球の最後を描くSFですが、本作がいわゆるディザスター映画とは違うことは原題からも読み取れます。

ミッドナイト・スカイ(午前0時の空)はいわゆる新たな一日の始まりを意味していて
これは人類の明日を描く希望の映画でもあるのです。

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劇中、オーガスティンは天文台に取り残されたと思しき少女アイリスと出会います。
彼女はオーガスティンの作り出した幻覚または妄想です。

朝食を摂ろうとシリアルを準備したらすでに食べかけのボウルがテーブルに置かれているシーンは、彼の精神がおそらくは治療で混乱していることを示唆しているし、
序盤、オーガスティンは避難中の夫人が娘を見失ったとパニックになっているのを目撃しており、そのことが頭にあったという見せ方でしょう。

少々ネタバレですが、フラッシュバックから明らかになるのは、少女はオーガスティンの娘であるということ。妊娠は間違いだったと告げられ、生まれたことも知らされなかった娘ですが、彼は偶然に幼い頃のアイリスを遠くから見かけていたのです。

オーガスティンが少女と食事中にグリーンピースで遊んだり、彼女を守るのは父親としての役割を追体験しているのでしょう。

オーガスティンを演じるクルーニーは、ゆっくりとした動きで孤独な老人を違和感なく演じています。

終盤、オーガスティンが宇宙船の乗組員と交信するシーンでは、彼がなぜ命をかけてまで宇宙船にメッセージを伝えたかったのかが明かされます。
オーガスティンとサリー(フェリシティ・ジョーンズ)の会話が感動的でね。
仕事に没頭し家族を失った孤独な科学者が最後に心の平安を得たことに安堵。
オーガスティンが一筋の涙を流すシーンに心が震え、「It's very nice to finally meet you.」のfinallyに涙腺崩壊でした。

宇宙空間での事故など、映像的な見どころはあるのですが
世間の評判がもう一つなのは、SFにしては作風が淡々としているからかなぁ。
説明も少なめなので、わかり難いと感じる人もいるかもしれないけれど
丹念に伏線が仕込まれ、全てが繋がるときに大きな感動があります。

原題の説明の中でも言及したように、これは人類の未来に希望を見出すお話。
道筋をつけたオーガスティンとフロンティアとして道を切り拓こうとするサリーの親子の物語であり、人との繋がりが希薄になりがちな今こそ観るべき映画だと思います。

 

映画データ
製作年:2020年
製作国:アメリ
監督:ジョージ・クルーニー
脚本:マーク・L・スミス
出演:ジョージ・クルーニー/イーサン・ペック/フェリシティ・ジョーンズ/カイリン・スプリンガル/カイル・チャンドラーデミアン・ビチルデヴィッド・オイェロウォティファニー・ブーン