クリストファー・プラマー追悼『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019)
Knives Out
【あらすじと感想】
世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティーが開かれた。その翌朝、ハーランが首から血を流した遺体となって発見される。
血しぶきの飛び方に遮るものが何もないことから、自殺と思われたが・・
世界的に有名なミステリー作家ハーラン・ブランの死をめぐるミステリーです。
先日お亡くなりになったクリストファー・プラマーさまが出演されてて観ましたが、これが期待以上に面白かった。
立派な洋館の書斎で主のミステリー作家が首を掻っ切った遺体となって発見される。
警察の初動捜査で自殺と処理されたが、ブノア・ブランという私立探偵の元に再捜査を依頼する手紙が届いたことから、事件から一週間後、自殺か他殺かをめぐり、再び聞き取り調査が行われる・・というお話です。
当日、事件現場となった館を訪ねたのは、誕生日パーティに出席したハーラン家の一族。ジェイミー・リー・カーティス、マイケル・シャノン、トニ・コレット、クリス・エヴァンスなど癖のある役者が勢ぞろい。
血族関係のないのは、第一発見者であるお手伝いさんと、ハーランの専属ナースのマルタ。他殺だとしたら、この中の誰が犯人かという流れ。
実はハーランはお金を持ちすぎた故に家族の独立を妨げたと後悔していて、家族ともちょっとしたトラブルがあったのが分かってくる。
一族の誰がハーランを殺してもおかしくないといった設定で、アガサ・クリスティの王道ミステリーをほうふつさせるんですね。
実際、監督のライアン・ジョンソンは、アガサ・クリスティに捧げる密室殺人ミステリーとしてオリジナル脚本を執筆したらしい。
ちょっとだけネタバレになるんですが・・・
これ、実は物語の序盤でハーランが死に至った経緯が描かれ
いわゆる「犯人」が誰かを見せてくるんですよね。
でもそれが序盤すぎるところに観る方は「?」を感じてしまうし
わざわざ名探偵を投入する意味は何だろうと不思議に思うわけです。
私立探偵ブノア・ブランを演じるのはダニエル・クレイグ。
そもそも彼は依頼主が誰なのかを知らないということで
いったい誰が「再捜査を望んでいるのか」というところも謎。
英国人のダニエルさんが南部訛りで喋るところがなんか可笑しいんですが、さらに可笑しいのは、ナースのマルタをワトソン君並みの助手みたいに捜査に利用するところ。
というのもマルタはハーランのよく話し相手で、家族のタラブルに関してもよく知っている。おまけに彼女は嘘をつくと吐いてしまうという体質であることから、うそ発見器みたいに「使えちゃう」わけです。
王道でありながら、そんなちょっと型破りな要素を加えるところがコメディよりで現代的。
ブノア・ブレンもちょっとオフビートだけど、鮮やかな推理手腕を発揮してくれるのも見もの。コミカルでテンポよく、2019年のアカデミー賞で脚本賞にノミネートの脚本はひねりもあって最後まで楽しかったです。
ちなみにゴールデン・グローブ賞ではコメディ部門の作品賞のほか、男優賞と女優賞にダニエル・クレイグとマルタ役のアナ・デ・アルマスが仲良くノミネートされてます。
この二人『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも共演してますね。
いきなり死体で登場するプラマーさまですが、時間を巻き戻した形でお元気な姿を見せてくれるのが嬉しい。
富豪らしい気品とミステリー作家らしい遊び心を持ち、家族の将来を思う優しいおじいちゃんという役どころを、プラマーさまは魅力的に演じてました。
再見含め、出演作を今後もボチボチ観て追悼したいと思います。
映画データ
製作年:2019年
製作国:アメリカ
監督/脚本:ライアン・ジョンソンアンソニー・ミンゲラ
出演:ダニエル・クレイグ/クリストファー・プラマー/アナ・デ・アルマス/ジェイミー・リー・カーティス/ドン・ジョンソン/マイケル・シャノン/トニ・コレット/クリス・エヴァンス