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映画ノート

アデルの恋の物語


1975年(フランス)監督・脚本:フランソワ・トリュフォー出演:イザベル・アジャーニ /ブルース・ロビンソン / ジョゼフ・ブラッチリー /シルヴィア・   マリオット 【ストーリー】『レ・ミゼラブル』などで著名な作家ヴィクトル・ユーゴーの次女、アデル・ユーゴーは、イギリス軍中尉のピンソンに一目ぼれ。以来、青年の任地が変わるたびに、アデルも彼について回る。そして彼女の愛は、次第に執念とさえ呼べる激しいものになっていく……。

■about movie
フランセス・V・ギールの原作『アデル・ユーゴーの日記』をトリュフォーが映画化。
イザベル・アジャーニ主演により女の情念を描いた不朽のロマンです。

■感想
q-colossusさんのところで紹介されていたトリュフォー監督の作品です。

主人公のアデルは恋しいピンソンを追い求め、カナダの地にやって来ます。
透き通るように白い肌のアジャーニの美しさには目を見張るものがあります。

そこで再会したピンソン中尉に愛しい気持ちを伝えますが、中尉は冷たく突き放します。
彼の気持ちはすでにアデルにはないのです。それでも執拗に復縁を迫るアデル。

イザベル・アジャーニがなんと19歳の若さで、狂おしいばかりの女の情念を表現します。
アデルはなぜ、この美貌をもちながら、受け入れられない愛に執着したのか…。

アデルの父親は世界に知られる文豪。
家族に愛された姉は19歳の若さで水死したとのくだりがあります。
ストーリーの中、何度かアデルが水におぼれ、もがき苦しむ悪夢をみるシーンが出てきます。
死んだ姉と一体化しているのか、姉の死に何らかの責任を感じているのか…。
姉への羨みの気持ちがあったのかもしれません。
そこのところがよく理解できませんでした。

しかしながら、何かアデルは愛に餓えていたと感じます。
それゆえ、一時は恋仲にあったピンソン中尉への想いを諦めることが出来なかったのではないか…。

この若さでこの名演、と賞賛されるアジャーニですが、この若さだからこその名演でもありましたね。
30過ぎてこの役を演じても、おそらく恐さだけが先走るでしょう(笑)

まだ人間的に成長の途上にあるアデルが狂おしいまでに人を愛してしまう。
観客は繊細なガラス細工に小さなヒビが入っていく様子を固唾を飲んで見守ることになります。
いつか、音を立てて壊れ去ることにドキドキしながら、そのはかなさ、もろさを楽しむのです。

狂気のアジャーニも美しいゆえに見ものです。やはり名作でしょう。


★★★★☆