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映画ノート

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々


2005年(ドイツ) 監督:マルク・ローテムント  出演:ユリア・イェンチ/アレクサンダー・ヘルト/ファビアン・ヒンリヒス/ヨハンナ・ガストドロフ アンドレ・ヘンニック /フロリアン・シュテッター【ストーリー】1943年のドイツ・ミュンヘン。“打倒・ヒトラー”を訴え、ビラ配りなどのレジスタンス活動を繰り返す“白バラ”と呼ばれる地下組織が存在した。2月18日、メンバーの一人、ミュンヘン大学の女学生ゾフィー・ショルは、兄ハンスとともに危険な大学構内でのビラまきを敢行し、運悪くゲシュタポに逮捕されてしまう。すぐさま、ベテラン尋問官のモーアにより厳しい取り調べが開始される。ゾフィーは恐怖を押し殺しつつ、毅然とした態度で理路整然と自らの無実を訴え続けるのだったが…。
■感想
ozbrogさんの昨年のベスト1作品。やっと観ることができました。

ヒトラー政権下で反ナチスを掲げ抵抗運動を行なった学生グループ“白バラ”の紅一点、ゾフィー・ショルの壮絶な最期を描いた実話です。

ミュンヘン大学で兄ハンスとともに反政府のビラを配っているところを捕まったゾフィー
尋問官モーアによる取り調べが開始されます。
これは90年代に東ドイツで発見された尋問記録を軸に忠実に再現されたものとのこと。
映画の大半を占めるこの尋問シーン。ゾフィーとモーアとの会話だけによるものですが
これが決して飽きさせないのです。

毅然として戦争の無意味さ、ヒトラー政権の蛮行を訴え続ける姿は実に聡明で気高い。
その気迫と真摯な姿勢に尋問官の心が揺れ始めるわけですね。
彼もまた同じ年頃の息子を持つ父親でした。
ゲシュタポ尋問官としての任務を遂行することと、人としての正義感の狭間に揺れるモーア。
二人のやり取りを観ているだけで震えてしまいそうでした。

物語はこの尋問を経て人民法廷へと移ります。
裁判官にはむかつきますが、これも実在した人物であり、実際に彼の裁判で多くの人たちが
反逆罪を問われ断頭台に送られているんですね。

最後まで毅然としてその意思を貫き通したゾフィー
21歳の若さでした。
恐ろしい思想を持ったテロリストではないのです。
フィアンセのことを同房のエルゼに語るゾフィーは将来に夢を抱いた普通の女性でした。
牢獄の窓から幾度となく、青空を見上げる彼女の目には何が見えていたのでしょう。
人前では決して涙を見せないゾフィーが人知れず恐怖に泣き崩れる瞬間。
壮絶でした。

ゾフィーを演じたユリア・イェンチベルリン国際映画祭で銀の熊賞(女優賞)を受賞してます。
物語が進むにつれ、その聡明な美しさが際立ってきます。

ナチス政権の悪を包み隠さず描いたこの作品。
これがドイツで作られたということも意味のあることなのでしょうね。

あの時代に、ゾフィーのように精一杯悪に立ち向かおうとした若い力があったこと。
その思いは決して無駄ではないと信じた一途さに感動します。

これは泣けました。


★★★★☆