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映画ノート

アモーレス・ペロス


1999年(メキシコ) 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ  出演:エミリオ・エチェバリアガエル・ガルシア・ベルナルゴヤ・トレド/アルバロ・ゲレロ バネッサ・バウチェ/ホルヘ・サリナス/マルコ・ペレス【ストーリー】ひとつの交通事故を起点に時間を前後して、兄嫁に恋した青年、手にしたはずのキャリアも恋人も一瞬にして失ったスーパーモデル、かつて妻と娘を捨て反政府組織に入り今や殺し屋となってしまった初老の男、それぞれの激しくも切ない愛の物語が展開するオムニバス風ドラマ。原題(犬のような愛)が示すとおり、いずれの物語も犬が重要な鍵として登場する。
■感想
21グラム」「バベル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の長編第一作。
カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリ、東京国際映画祭東京グランプリ&最優秀監督賞を受賞し、その名を世界に轟かせた作品です。

アモーレス・ペロス」というのは直訳すると【犬のような愛】なんだそうです。
主に3つのストーリーがオムニバス形式で、時間軸をずらしながら展開する構成。
接点は一つの交通事故。

3つのストーリーのすべてに犬が登場し、犬を愛する主人公たちの壮絶な人生の断片が切り取られます。

注目のガエル・ガルシア・ベルナルが演じるのは兄嫁に恋した青年 オクタビオ
兄夫婦と同じ屋根の下に暮らし、兄嫁のスサナといつの日か逃亡し一緒に暮らしたいと夢見る青年です。
一途な思いで二人の愛をひたすら信じるオクタビオ。愛犬を闘犬で戦わせ、大金を手にし、夢の実現を疑わないオクタビオ。しかし、愛の結末は。。。

なんかね、ものすごく痛い作品ですよね。
3つのストーリーの誰もが夢に向かってひた進む。そして誰もが見事に散り果てる。
この貧しい国メキシコで、夢を追いかけることは許されないのかと思ってしまうような無情感。
何か大きな力で淘汰されてしまうような。。。 それぞれの人生に空しさを感じてしまいます。

彼らの傍にはいつも犬がいました。
傷ついても、捨てられても、ひたむきに愛することを忘れない犬たち。
物語に登場する主人公たちもまた、この犬のような存在と言えるのかもしれません。

限りなく暴力的で、刹那的。だけど何か自分の中の乾いた心が動き始めるような
不思議な魅力を放つ作品でした。


このガエル君はいい!!