しまんちゅシネマ

映画ノート

天国の日々


1978年(米) 監督:テレンス・マリック 出演:リチャード・ギアブルック・アダムスリンダ・マンズサム・シェパード/ロバート・ウィルク【ストーリー】第一次世界大戦が始まって間もない頃、シカゴから放浪の旅に出るビリー(R・ギア)と妹リンダ(L・マンズ)、ビリーの恋人アビー(B・アダムズ)の3人はテキサスの農場で麦刈り人夫の職につく。若き農場主(S・シェパード)はアビーを見初め、彼の命が長くない事を知ったビリーは、楽をしようとアビーに形だけの結婚を促す……。
■感想
映像美に定評のあるテレンス・マリック監督による作品です。

誰もが貧しい時代、仕事を求めてテキサスの大農場にやってきたビリー(リチャード・ギア)、妹のリンダ、恋人のアビー(ブルック・アダムス)。
朝から晩まで休みなく働かなければならない日々にどうしようもない焦燥感を感じるビリーでしたが、
農場主に見初められたアビーに形だけの結婚を勧め、3人揃って農場で暮らすようになります。

今までの惨めな暮らしとは、うってかわって、笑いに満ちた豊かな暮らしを満喫するビリーたち。
しかし、いつしかチャックに本当の愛を感じるようになるアビー。アビーへの愛の大きさに気づくビリー。
そして、そんな二人に疑いの眼差しを向けるようになるチャック。複雑な3角関係へと発展してしまうのですが。。。


面白いのは、これ妹リンダの視線で、彼女のナレーションで物語が進むスタイルである点。

幼い頃から、貧しい暮らしに耐えてきたリンダは、子供のくせにタバコを吸う姿がサマになっていたりする、どこか大人びたところのある少女でした。
そんなリンダのナレーション、実は一度目はさらりとすり抜けてしまうのですが、話しの顛末を知った後に見てみると
あー、こんな風に言っていたんだと感慨をあらたにするものでした。
リンダにとって農場で暮らしたわずかな時間はまさに「天国の日々」だったんですね。

また、ナレーションの中で「悪魔は農場にひそんでいた」と語られます。
欲に目がくらんでしまうビリー。愛を信じることが出来なかったチャック。
欲望や嫉妬、懐疑心。様々な邪悪な思いが悪魔を引き寄せるのだと思わずにはいられません。
切ないですね。


アカデミーで撮影賞を受賞した本作の映像の美しさは息をのむほどです。
光と影の使い方が実に素晴らしく、写真集を静かにめくっている気持ちになりました。
テキサスの農場の夕暮れ時。草むらに潜む小動物の中に子供の頃のウサ子の姿をみつけ、思わず一時停止。



若いギアさまは、妹や恋人に貧しい暮らしを強いているのは自分のせいだと考え、なんとか抜け出したいと願う青年ビリーを演じます。結果、アビーを心から愛しながらも、悪魔に心を売ってしまうんですね。
ビリーの優しさと野心と切なさは十分に伝わる演技でした。

チャックを演じたサム・シェパードもギアさま以上に素敵。
ヒロインのブルック・アダムスってあの下がった口角が幸薄い気がして、個人的には魅力を感じないんですが。。^^>"
この作品には合っていたのかな。

前に観た時は退屈な映画だと思っていたのに、今回再見してとっても好きな作品であることに気づきました(笑)
切なく繊細な音楽と美しい映像を堪能しながら、ノスタルジックな気分に浸ってください。



★★★★*