しまんちゅシネマ

映画ノート

狼たちの午後


1975年(米)監督:シドニー・ルメット出演:アル・パチーノジョン・カザールチャールズ・ダーニング/ジェームズ・ブロデリック/クリス・サランドンペニー・アレン/キャロル・ケイン/サリー・ボイヤー【ストーリー】ある夏の日、3人組の強盗が銀行に押し入った。1人は怖気づいて逃げ出したが残された2人の犯人、ソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール) は、警察に包囲され篭城する羽目になる。追い詰められていく中、人質との間には奇妙な連帯感が生まれ、野次馬も彼らを英雄視するようになる……。
■感想
'72年にブルックリンの銀行で実際に起きた強盗事件を元に制作された犯罪ドラマです。

犯人たち、銀行に押し入った時には3人。ところが犯行を実行に移した直後に若手の仲間の一人が
「やっぱり無理だよ。できない。ごめんよー。」とばかりに現場から走り去る。なんじゃこりゃな展開。

残ったのはソニーアル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)の二人。

警察との交渉を重ね、説得に訪れる家族とのやりとりから徐々にその素性や目的が分かって来るのですが・・・。
なんとも切ないし、やるせないんですよね~。
後半、彼の無念の思いが痛いほど伝わって来て、たまらない気持ちになりました。

事件の一部始終がテレビで放送され、警察に包囲されたソニーに民衆は熱狂。
ベトナム戦争後の混乱した頃、こうしたアンチヒーローがもてはやされた時代だったのでしょうね。

人質たちの間に連帯感が生れ、犯人と人質の関係も徐々に変わっていく様子が面白いです。

この頃のアル・パチーノの演技は本当にピュア!! いつ銃撃されるかわからない状況下の恐怖。
切羽つまった人間の狂気、そもそも備わった人としての優しさを見事に演じています。
オスカーに匹敵する演技だよなぁと思って調べてみたら
この年は「カッコーの巣の上で」のジャック・ニコルソンがとってました。そうかー、残念。


もう一人の犯人サルを演じたジョン・カザールの存在感も凄いです。
寡黙で不気味。切れたら何をするかわからないという底知れない怖さを感じる演技でした。
彼の素性については殆ど描かれていないのもミソ。謎な感じがいいのです。


このジョン・カザールさん、メリル・ストリープとの結婚も決まっていたようですが、
この映画の3年後に骨肉腫の肺転移でお亡くなりになったのだとか。
劇中、煙草は身体に悪いから吸わないと語り、この期に及んで健康の心配?と人質の一人に笑われるシーンがあったのを思い出しました。映画出演数は少ないものの、絶妙な個性で将来を期待された役者さんだったようで、残念ですね。


ラスト、一瞬の緊張のあとに訪れる虚しさ。。

観て良かったと思う作品でした。





★★★★☆