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映画ノート

ボーイズ・ドント・クライ


1999年(米)監督・脚本:キンバリー・ピアース出演:ヒラリー・スワンククロエ・セヴィニーピーター・サースガード/ブレンダン・セクストン三世   アリソン・フォランド/アリシア・ゴランソン/マット・マクグラス/ロブ・キャンベル/ジャネッタ・アーネット【ストーリー】1993年、ネブラスカ州リンカーン。20歳になるブランドンは少年の格好をし、町に出かける用意をしていた。従兄でゲイのロニーは“フォールズ・シティの連中はオカマを殺す”と警告するが……。ブランドンはフォールズ・シティへと向い、地元のバーでラナと出会い恋に落ちる。しかし、ある事件がもとでブランドンの“秘密”が明るみになったとき悲劇が始まった……。
■感想
ヒラリー・スワンク性同一性障害の主人公を演じてアカデミー主演女優賞を受賞した作品です。ようやく観ました。

これ実際に起きた事件を基に作られた実話だったんですね。
それだけに哀しみも大きく、考えさせられることの多い作品でした。

性同一性障害の20歳のブランドン(ヒラリー・スワンク)は、男と偽り、、というか、その風貌に周囲も勝手に男と間違えてしまってるんですが、バーでラナ(クロエ・セヴィニー)と出会い恋に落ちます。

ブランドンは決して、女を軟派するために男の格好をしていたわけではなく、
彼の中の男性の部分と言うのは抗いようもなく、女性の格好でいることに耐えられなかったからだと思うのです。
女性に恋をしてしまうのも、極普通に生まれてくる感情。

しかしながら、相手を普通の男と信じる愛しいラナに真実を告げることが出来ず、嘘をつき通すために、その家族にまでも
真実を隠し通さなければならず、それが悲劇の始まりになるのですね。

ブランドンが男のフリをした女であることが分るとき、周囲はただ彼を異端として忌み嫌い排除しようとする。
悲しいことだけど、昔から人にはそういう傾向があるんですよね。
これはDNAに組み込まれた人間の性質なのだろうと、いつも思います。

最近では日本でも性同一性障害の人々に対しての認識も深まり、本人が望めば戸籍の性を変えることも可能となるなど、
法も変わって来ています。もしかしたら、この映画の影響も大きいのではないでしょうかね。

自分の性を信じ、男として生きたかったブランドンの生涯は悲しいものでしたが、ラナとひと時本当の愛を感じることが出来たのは幸せだったのでしょうね。



オスカーを獲得したヒラリーの演技は流石のものでした。
彼女はこの役に備え、実際に一ヶ月以上主人公と同じように胸に包帯をし、パンツの中に靴下を入れて前を膨らませ、男性の格好をして過ごしたのだとか。映画でも本物の男の子に見えましたもんね。
多くの候補者を振り切ってこの役を獲得したのも納得。

衝撃的なシーンも含む作品でしたが、劇中一番ガツンときたのは、その衝撃シーンよりもラナのお母さんの台詞。
暴行され傷ついたブランドンがラナの家のドアを叩いたシーンでの母親の一言でしたが
「I don't want it in my house」って言ったんですよね。。これには思わず「あっ!」と声が出てしまいました。
ブランドンはhimでもherでもなくit。すでに人間扱いではないのです。
この時のブランドンの驚きと落胆の表情も心に残りましたし、ヒラリーは彼になり切っていると感じました。

事実であるだけにやるせないさが残りますが、映画を通し、多くの人が性同一障害に認識を深めることが出来たなら
この映画の意味はあると言えるのかもしれません。




★★★★☆