しまんちゅシネマ

映画ノート

モンゴル


2007年(ドイツ/カザフスタン/ロシア/モンゴル)監督・脚本:セルゲイ・ボドロフ出演:浅野忠信スン・ホンレイ/アマデュ・ママダコフ/クーラン・チュラン【ストーリー】陰謀と裏切り渦巻く12世紀のモンゴル。後にチンギス・ハーンと呼ばれ、モンゴルを統一して大帝国を築いた男テムジンは、モンゴルの一部族の頭領の息子として生まれた。テムジン9歳の時、彼は運命の相手ボルテと出会い、彼女を花嫁に迎えることを約束する。しかし、父が敵の部族に毒殺されると、テムジンは父の部下に裏切られ、命を狙われる身となる。ある時、凍てつく池に落ちたテムジンは、たくましい少年ジャムカに助けられ、2人は兄弟の契りを交わすのだったが…。

80回アカデミー賞をおさえよう! 外国語映画賞ノミネート『モンゴル』!

■感想
浅野さんがチンギス・ハーンを演じ、アカデミー外国映画賞にノミネートされたことで話題になった作品です。

一部族の長の息子として生れ、幼くして父親を敵に毒殺されるという過酷な運命を背負った少年が、
いかにして史上最大のモンゴル帝国を築いていったかを、壮大な叙情詩として描く歴史大作。
観応え十分の素晴らしい作品でした。

今日の友は明日の敵。強い主を求めることが当たり前とされていた時代。
領主に対する信頼のないところに強い勢力は生まれるはずものなく、陰謀と裏切りの渦巻く下克上のモンゴル。

その中にあって、人を信頼し許すことのできる寛大な心と、大きな勇気と力を兼ね備えたテムジンが人々の心を捉え
兵を増やし勢力を拡大していくのですね。

モンゴルを愛する心に突き動かされ、巨大な帝国を築いていった伝説の男チンギス・ハーン
モンゴル人にとっては偉大な英雄であるはずのチンギス・ハーンになぜ日本人である浅野忠信を起用したのか?

素朴な疑問でしたが、監督はロシア出身。チンギス・ハーンの歴史劇を製作するにあたりアジア人俳優を探したのだとか。
全編モンゴル語を使いこなし、深い愛と静かな闘志を秘めたチンギス・ハーンを演じた浅野さんは本当に魅力的でした。
彼には特別なカリスマ性を感じますね。それはチンギス・ハーンのそれに重なるものがあったのでしょう。

緑の草原、ひび割れた大地、突き抜けるような青空など映像の美しさにも心を奪われます。
雷を恐れるモンゴル人。自然現象に畏敬の念を込め描くことで、
大自然とともに生きる彼らの過酷さと神秘性が一層に引き立っていたと思います。


しかし強い男を夫に持つのは大変ですね。家族と穏やかな時間を過ごすのもつかの間。
安住よりも闘いを求め旅立つのは、強い男のサガなのでしょうか。
それでもテムジンを心から愛し、何度も離ればなれになりながらも、夫を信じ助ける妻の愛の形も素敵でした。

ヒトラーの贋札」も良かったけれど、こちらも決してひけをとらない大作でしたね。



★★★★*