しまんちゅシネマ

映画ノート

パリ20区、僕たちのクラス


2008(フランス)監督:ローラン・カンテ出演:Fran醇Mois B醇Pgaudeau/Agame Malembo-Emene他
■感想
今月のお題に戻っていきませんが、、
最近の話題のフランス映画、というとこの作品でしょう。

カンヌでパルムドールアカデミー賞外国語映画賞でもノミネートされ、最優秀の有力候補でもありました。
インディペンデント・スピリット賞で最優秀外国語映画賞等、数々の受賞を果たした作品です。

タイトルの示すように、これはとあるフランスの学校の、ひとクラスの様子を描いた作品です。

これは惹き込まれました。

フランソワは若いながらも中堅の教師。
生徒を理解し、自分にも正直に、公正に生徒を導いてきた彼は、それなりの自信をもって
新しい勤務地に赴きます。

彼が担当したクラスは、黒人、アラブ系、中国系と多国籍な構成。
生徒たちは移民としての様々な問題を抱えていました。

生徒の態度の悪さに驚くフランシスですが、次第に彼の手腕を発揮します。
彼が生徒に与えた「自分自身のことをポートレイトする」という課題は
生徒たちが、それぞれに自らのアイデンティティに真正面から立ち向かうことに繋がったようで、
変に自分をガードしていた生徒が、素直に自分を表現するとようになる様子は見ていて心地よいものがあります。



生徒のよいところを引き出そうとする教師。
こんな教育者がいたら子供たちはどんどん変わっていく‥
そう思っていた矢先に事件が起きます。

この頃から映画は緊迫感を増し、クラスの様子を固唾を飲んでみまもることになります。
情熱を持ち、常に生徒の側にいたと思って来たフランソワの無念を思うとやるせない。はぁっと溜め息が出ちゃいます。

結果的にはビターなものを残す本作。
生徒の側に立つということはリスクのあることなんだということも痛感し、教育の難しさを感じずにはいられません。

移民を多く受け入れるフランスのお国事情が垣間みれることも特徴的でしたが
なんと言っても驚いたのはその教育システム。
この学校は、生徒の成績判定会議に、クラスの代表者2名を参加させるんですね。
この公正さがあだになったりもするところに、理想と現実の厳しさを感じるところでした。

理想的な教師を描いた作品だと、勝手に思い込んでいた私にはちょっとショッキングでしたが
とても真摯に教育現場を見つめた作品だと思うし、これだけの(おそらくは)低予算で
サスペンスフルに興味を惹き付ける作品に仕上げた手腕はお見事。
ビターながらも観終えた後味はなぜか悪くはないのは、学校側の処置に納得がいくからでしょう。
一新任教師の視点と見せかけ、実は学校側の大きな視点でみつめているという構成も渋いですね。

ロットン・トマトも97%の高評価。ヒューマンドラマとしても見応え十分です。

日本上陸はいつでしょう。


★★★★*