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映画ノート

マーク・ラファロ初監督『シンパシー・フォー・デリシャス』

 
昨日はDVDで『メカニック』を観たんだけど、二日続けて血の気の多い作品だったのもあり
自分はアクションもの、肌に合わないわぁと実感して見終えました。
反動に観たのがこちら『シンパシー・フォー・デリシャス
マーク・ラファロが初監督を努め、サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞した作品です。
シンパシー・フォー・デリシャス(2010) アメリ
監督:マーク・ラファロ
出演:クリストファー・ソーントン/マーク・ラファロジュリエット・ルイスノア・エメリッヒ
     ローラ・リニーオーランド・ブルーム
 

本作で主演、脚本を努めるクリストファー・ソーントンが演じるのは、
かつては伝説的なDJとして名をはせたが、
事故により車椅子生活となり、ホームレス同然のディーン。
ある日、情熱的な神父ジョー(マーク・ラファロ)と出会い、
自分に人を癒す力が備わっていることを知ったディーンは
やがて、その力を金と名声に変えるべく、カリスマロックバンドに加わる・・・というお話し
 
ソーントン自身、25歳の時に、事故で下半身不随となって以来、車椅子生活を余儀なくされる身。
スティーヴ・マーティンがインチキ伝道師を演じた『奇跡を呼ぶ男』という映画があったけど
事故から1年半くらい経った頃、ソーントンも神の啓示を求め、
教会のヒーリングサービスに参加する日々を送ったのだとか。
ラファロもそんな彼を見守ってきたのだそうで、
映画は、まさにソーントンが感じた憤りや希望を、
友人であるラファロが、シンパシーをもって描きあげた作品と言えるでしょう。
 
人を治すことができるのに、その力は自分には通用せず もどかしさに憤るソーントン
ラファロ演じる神父は、ホームレスを助けることに尽力するが
一方で、寄付金を得るためにディーンを利用する
結果としてディーンを苦しめ、神父として葛藤するという役柄で
二人のやり取りがとてもリアルなんです。
 
 
ロックバンドのカリスマ・ボーカル“ステイン”を演じるオーランド・ブルーム
ちょっといっちゃってる演技はみもの。
あまりうまくはないけど歌も歌っていて、ステージのパフォーマンスの雰囲気はよしです。
メンバーのベーシストにジュリエット・ルイス、彼女は本当にうまい。
バンドのマネージャーにローラ・リニー等、実力者を脇に配してるのも
ラファロの人柄、人脈でしょうか。
 
映画の行き着くところはとてもファンタジー
宗教による救済をシニカルに描く一方で、
どこかで救いを信じ、希望を感じさせる終わり方は、
何か胸がすく思いがして心地よい。
何度も観たくなるような、不思議な魅力のある作品でした。