しまんちゅシネマ

映画ノート

少年と自転車



あけましておめでとうございます。
今年も張り切って映画を観ていきます。
まずは大晦日の昨日観た本作から。




少年と自転車(2011)ベルギー/フランス/イタリア
原題:Le Gamin au velo
監督: ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
出演: セシル・ドゥ・フランス、トマス・ドレ、ジェレミー・レニエ



 12歳の少年シリルは保護施設から父親に電話をかけるが通じない。
制止する職員たちにかみつき、暴れた挙句に施設を抜け出したシリルが向かうのは
かつて父親と住んでいたアパート。しかしそこに父親の姿はない。
大事にしていた自転車さえ売られていたことは、シリルを哀しみのどん底に突き落とす。
そんな時、偶然知りあった美容師のサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)が週末シリルを預かることに同意。次第に心を通わせる二人だったが・・。





 父親に捨てられた少年が、偶然出会った一人の女性に支えられ、再生する姿を描く作品です。
『ある子供』で、自分の子供をお金のために売ってしまった若い父親を演じたジェレミー・レニエが、ここではシリルの養育を放棄した父親を演じていて、まるで続編のような印象を受けますね。

 こんな大人子供の父親に捨てられた子供はどうなってしまうのか。
「悪」はハイエナのように弱者の匂いをかぎつけ、シリルに迫り
シリルが道を外すのはあまりにも容易い。
シリルの場合、犯罪に手を貸すのが大好きな父と暮らせるように、あるいは親切にしてくれる友の恩に報いるためなのがやるせないところです。
 
この映画はタイトルにもある「自転車」の使い方が絶妙でした。
父が買ってくれた自転車は父の愛を象徴するものだと信じるシリルは、盗まれそうになるたびに必死に追い、決して諦めません。
印象的なのはシリルが自転車を倉庫にしまうシーン。
犯罪を犯した自分を許してくれたサマンサに、シリルが完全に心を開いた瞬間
父との絆の象徴であった自転車はその役割を終えたのだと思いました。

 終盤、シリルは過酷にも自分の冒した罪に対峙することになります。
小さな子供なりに罪を受け入れる姿に、切なさと同時に成長を感じ泣きそうになりました。
それでもシリルの向かう先にはサマンサがいる。
再び自転車を走らせるラストシーンには希望を感じました。
 子供を信じ、無償の愛を与えるのは、実の親でなくてもいいんですね。
監督と父親との関係はどうだったんだろう、、などと思ってしまいますが。
繊細な子供の心を丁寧に描いた秀作でした。
シリルの葛藤と成長を演じきったトマス・ドレ君も見事です。


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Tracked from CINEmaCITTA&.. at 2013-06-07 19:31 x

タイトル : 『少年と自転車』 Le gamin au velo
少年と自転車】 LE GAMIN AU VELO ベルギー・フランス・イタリア 2011 監督・脚本 :ジャン=ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ 出演 :セシル・ドゥ・フランス / ジェレミー・レニエ / トマス・ドレ (2011 カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ受賞) まず、 ダルデン......more