しまんちゅシネマ

映画ノート

ウォールフラワー




アカデミー賞の前に観ておくべき25本の中の一本から今日はこれ。

ウォールフラワー(2012)アメリ
原題:The Perks of Being a Wallflower
監督:スティーヴン・チョボウスキー
出演:ローガン・ラーマンエマ・ワトソンエズラ・ミラー、メイ・ホイットマンケイト・ウォルシュ


本作は原作者ティーヴン・チョボウスキーの半自伝とされるヤングアダルト小説の映画化で、チョボウスキー自身がメガホンをとりました。

主人公は15歳の高校一年生チャーリー
彼は新学期に向けた意気込みを「誰か」にあてた手紙に書き綴ります。
そこで語られるのはチャーリーが逃れる術を知らない心の痛みを抱えているということ。
それでも彼は、孤独から抜け出すことを切望しています。
映画はチャーリーと周囲の人との交流を描くと同時に、彼の心に巣くう悲しみを、ミステリータッチとも言える手法で徐々に明かす作り。

原作小説は1999年の刊行以来、多くの若者に愛され、この本により命を救われたという者も多いのだとか。
日本でも自殺問題は大きなイシューとなっているけれど、誰にも相談しないままに死んでいくものも多いことでしょう。死を意識するほどの悩みを親に相談することも難しいはず。

でもチャーリーには気持ちを共有する友人がいて、でしゃばりすぎることなく耳を傾けてくれる家族がいた。
本を読み、自分のことを文章にしたためることを薦めてくれた教師(ポール・ラッド)の存在も大きい。
書くことで自分を冷静にみつめることもあるから。
この作品には、思春期の子供が自らに向き合う術と、大人の対応のどちらにもヒントがあるのです。

チャーリーには『3時10分、決断のとき』でクリスチャン・ベイルの息子を演じたローガン・ラーマン
周囲になじめずいわゆる壁の花タイプのチャーリーと友達になるパトリックに『少年は残酷な弓を射る』のエズラ・ミラー。エキセントリックだけど、痛みを知っているからこそ人にも優しくなれる人。チャーリーが一目惚れしてしまうサムにハリポタシリーズのエマ・ワトソン
いつのまにか大人っぽくなっていたエマが本当に魅力的。監督自身がサム役には彼女をと望んだだけあってはまり役でした。

90年代前半が舞台ということで、タイプライターやカセットテープが出てくるし
使われている曲もちょっと懐かしい感じ。(長くなるので音楽については裏ブログで)

終盤はチャーリーの心が開かれていく姿に癒され、感動の高まりを抑えることが出来ません。
作品を愛する故、自ら監督することを決めたチュボウスキー。
シーンシーンに瑞々しさが溢れ、初監督作品とは思えない出来栄えです。

日本公開は未定だけど、これはお薦め!




★★★★☆