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映画ノート

【映画】黄金のアデーレ 名画の帰還

裏でうらうらシニア選手権やってまして
今日はチャールズ・ダンスを選出しました。
デビュー当時はテレビドラマの出演が多く、レトロ作品として取り上げたいものがなかったので、今日はこちらで新作を紹介することにします。


黄金のアデーレ 名画の帰還(2015)アメリカ/イギリス
原題:Woman in Gold
日本公開:2015/11/27

1998年ロサンゼルス。マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、姉のルイーゼの葬式に参列している。マリアは姉が故郷のオーストリア政府にナチスに没収された絵画の返還を求めようとしていたことを知り、弁護士の助けを求めていた・・

『マリリン 7日間の恋』のサイモン・カーティスヘレン・ミレンを主演に
クリムトの名画「黄金のアデーレ」の返還を求めてオーストリア政府に訴訟を起こした女性の実話を描く作品です。


冒頭はお葬式のシーン。
姉へ別れを告げるマリア(ヘレン・ミレン)の喋りと棺に施された星のマークから彼女がヨーロッパからやってきたユダヤ人であることがわかります。

マリアは姉の遺志を継ぎ、ナチスドイツに奪われた「黄金のアデーレ」を取り戻したいと思っている。絵に描かれたアデーレは共に暮らした彼女の叔母だったのです。


これは物凄く面白かった。
映画は絵画を巡る訴訟を描くものですが、単なる法廷ものにはなっていません。
途中フラッシュバックでナチス支配下にあるオーストリアの状況なども描かれるため、マリアの祖国への思いが痛いほどに伝わるのですよ。

家族を殺され財産を奪われ、たった一人の肉親である姉が死んでしまった今
「黄金のアデーレ」は唯一マリアと家族を結びつけるもの

深い悲しみを背負いながらも、美しいものを好みはつらつとして
正義と家族の絆のため、全てのユダヤ人の悲しみに報いるかのように訴訟に挑むマリアを演じたヘレン・ミレンが圧巻の演技。

マリアを助ける若き弁護士を演じたライアン・レイノルズも、
無力感に苛まれつつも、いつしか自分のアイデンティティに目覚め裁判に身を投じていくランディを熱演。
赤ちゃんをあやす様子が微笑ましくて、実生活でパパになったライアンの素の姿を重ねてしまったな。
奥様は『アデライン、100年目の恋』のブレイク・ライヴリーですもんね。羨ましい。

チャールズ・ダンスは、ランディの法律事務所の長を演じてまして
相変わらず朗々としたお声で、威厳に満ちたお姿を見せてくれています。
最近は軍人など厳格な役が嵌るダンスさんだけど、『ドラキュラZERO』ではこんな怪物を演じてたり、その振り幅の大きさも魅力ですね(笑)


ナチスに奪われた美術品を奪還する『ミケランジェロ・プロジェクト』が一度は劇場公開見送りとされながら上映されることになったのは、本作のおこぼれにあづかったかたちかしら。同じテーマを扱っても描き方はそれぞれなのが面白いですね。

芸術に満ちたオーストリア
映像も音楽も美しかった。

祖国を捨てなければならない人の思いに、深く心を打たれた作品でした。