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映画ノート

パピヨン


1973年(フランス)監督:フンクリン・J・シャフナー  原作:アンリ・シャリエール出演:スティーヴ・マックィーンダスティン・ホフマンヴィクター・ジョリイ/アンソニー・ザーブドン・ゴードン/ロバート・デマン【ストーリー】ケチな金庫破りで捕まった男。その男は胸に蝶の刺青を入れていることから「パピヨン(蝶)」とあだ名されていた。 パピヨンは仲間の裏切りに遭い、幾つもの罪を着せられた末に終身刑の判決を受けてしまう。 パピヨンは脱獄を決意。資金調達のため同じ服役囚のドガという男に目を付ける。 ドガ国債偽造で逮捕された男で、今もその腕が噂される偽札作りの天才だった。当初パピヨンドガと取引することで逃亡費用を稼ごうとするが、やがて二人は奇妙な絆で結ばれてゆく・・・

脱走できるか! このままくたばるか!

■感想
金庫破りで捕まったにも関わらず、殺人者として投獄された主人公パピヨンスティーブ・マックィーン)。
13年間に及ぶ過酷な投獄生活の間、なんと7回の脱走を試み失敗。
不可能と思われる「脱獄」に挑み続けた男の執念の物語です。

もうね、これはすごいです。凄すぎ。
何が凄いって、まずマックィーンの執念の演技ですね。
過酷な獄中生活。これ事実に基づいてるって言うから、ますます恐ろしい。完全に虫けら同然の扱いです。
刑期を終えて出所するものなどひとかけら。多くはこの極悪な環境の中、命を落としていくのです。
無実の罪をきせられたパピロンは脱獄を決意。彼は人間の尊厳を求めたのですね。

獄中で知り合ったドガダスティン・ホフマン)との絆の描き方も秀逸です。
脱獄のために必要な金を手に入れるため、パピロンはドガを狙う囚人からドガの命を守ることを約束。
取引の関係が、次第に友情へ変わっていくのです。

パピロンとドガ人間性の対比も面白いところでした。
脱獄に命をかけ、無謀と言われようと執念を貫き通すパピロン。
片や、頭のいいドガは、金の力を信じ、穏便に獄中生活を送ろうと考える男。

脱獄に失敗し、独房で悲惨な食生活を余儀なくされるパピロンに毎日水の瓶に忍ばせココナッツを送り続けるエピソードがあります。
おそらくは金を使って、ドガがパピロンのためにしたことなのですが、これが看守に見つかり、結果としてパピロンは半死の状態になるほどの拷問を受けることになるのです。でも、そんな状態になろうともパピロンは送り手を明かしません。

そのことでドガが最後までパピロンに負い目を感じているのですね。
近づきそうで近づけない二人の関係。でもドガはパピロンに限りない憧れの気持ちをもって、敬愛していたのではないか。
彼の様には生きられない自分にも納得し、自分流の生き方を通す、ドガを演じたホフマンも素晴らしい。

映画を通して、私は何度も嗚咽してしまったのですが、思えばどれもこの二人の関係に思いを馳せた場面です。

ラスト。
脱獄に成功できるかどうか、そんなの関係ないさ。死ぬかもしれない?そうかもな。。ドガとそんな会話を交わした後
白髪のパピロンが紺碧の海に身を投じるシーン。。 美しすぎです。


久々にいいもの観たなぁという気になりました。名作ですね。




★★★★*