しまんちゅシネマ

映画ノート

ヴィタール


2004年(日本)監督・脚本:塚本晋也出演:浅野忠信/柄本奈美/KIKI/岸部一徳國村隼串田和美/りりィ/木野花【ストーリー】交通事故に見舞われるも一命を取り留めた医学生の高木博史。だが、彼は自分が誰なのかも分からず、父や母の顔さえ思い出せないほど一切の記憶を失ってしまっていた。ただ、なぜか医学書にだけは興味を示す博史。そして彼は、大学の医学部に入学する。やがて2年生となり、必須科目である解剖実習が始まった。博史の班には若い女性の遺体が割り当てられ、彼は解剖の世界に没頭していく。そのうち博史はふいに現実と異なる世界へと入り込んでいた。それは、彼が涼子という女性と2人きりでたたずむ甘く切ない光景だった…。
■感想
サンダンス・チャンネルという、インディペンデンス系のチャンネルで放送されたので観てみました。

これジャンルはなんでしょう?ホラーでもないのですが、、かなりスピリチュアルな世界観。

事故で恋人を亡くし、自分も記憶を失ってしまった医大生の博史は、その虚無感を埋めるかのように解剖に没頭します。
彼は担当した若い女性の献体に向かい合ううち、不思議な精神世界に入り込むようになるのです。

その精神世界は、穏やかな光にあふれ、死んだ恋人涼子に会うことが出来る南国の楽園。
そこで涼子と戯れるうち、無くしていた記憶が少しずつ蘇って来るのですが。。。


博史の中に存在した、精神世界ってなんだったんでしょう。
恋人をなくした寂しさ。責任感からの抑圧が作り出した虚構の世界?
あるいは、ひとり旅立つことを寂しいと感じる、涼子の思いが作り出した世界なのか。

特に、怖さを感じる作品ではありません。(解剖シーン多少グロいですが。。)
むしろ、現実の世界に生きようとする博史をあたたかく見守る作品なのかも知れません。


医大生博史を演じる浅野忠信の存在感は凄いですね。
グイグイと作品を引っ張っていく力のある人だなぁと思ってしまった。実はほぼ初浅野状態の私。^^>"

解剖学の教授役の岸辺一徳もうまいなぁ。まず声がいい。
解剖実習のシーンで、岸辺一徳の声の穏やかさが、グロくなりがちな解剖シーンに静粛な空気をもたらしてくれます。
監督さんは実際の解剖実習の場に何ヶ月も足を運び、見学したのだとか。
献体に対する医療側の配慮など、細かい演出はその賜物のようです。

死んだ恋人涼子を演じたのはくラシック・バレエダンサーだそうですが、、、そのダンスシーンが一番怖いかも。
ちょっと貞子を連想してしまう、独特な動き。。
腕も細すぎーー!私もダイエットしすぎてこうならないように気をつけよって思うくらい、ちょっと引きました(笑)



現実の世界はブルートーンで雨が多く、逆に精神世界が明るく穏やかに描かれているのが印象的でした。

うまく語れないのがもどかしいんだけど、何故かピュアな感覚に陥って、途中涙がこぼれてしまったんですよね。
監督さんの独特なセンスみたいなものを感じます。



★★★*☆