しまんちゅシネマ

映画ノート

戦慄の絆


1988年(カナダ)監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ出演:ジェレミー・アイアンズジュヌヴィエーヴ・ビジョルド/ハイジ・フォン・パレスケ/バーバラ・ゴードンシャーリー・ダグラス/スティーヴン・ラック/ジリアン・ヘネシー【ストーリー】カナダのトロント産婦人科医院を開業する一卵性双生児の名医、エリオットとビヴァリー。幼い頃から文字通り一心同体に育った兄弟は、しかしある日、一人の女性に出会った事から、それまでのアイデンティティの均衡を崩してゆく……。
■感想
何気にクローネンバーグな週になってしまってますが^^>"
今日は一卵性双生児の医師の苦悩を描く心理サスペンスです。

生まれてずっと共に暮らして来た開業産婦人科医師のエリオットとビヴァリー。
彼らは一卵性双生児で見た目はそっくり。けれど、兄エリオットが、自信にあふれ、行動的な人物であるのに反し、
弟ビヴァリーは落ち込みやすく、自分から女性を口説くことも出来ない内向的な性格。
不妊検査のために医院を訪ねた女優と夜を共にした兄から、いつものように彼女を譲り受けることになるのですが、
弟ビヴァリーはこの女優を深く愛すようになり、それまでの兄弟のアイデンティティの均衡が壊れ始めるのです。

本作では、いつものエログロはあまり感じません。
この女優の設定が、産婦人科的に突然変異であったり、その手術の機械器具が特異であったり
あるいは、悪夢の内容にちょっとグロシーンがでてきたりはするものの、
基本的には壊れいく兄弟の心理にスポットが当てられます。

「異質なもの」や「変わりいくもの」を描くのがクローネンバーグの本質とするならば、本作では異常なまでに
一体化してしまった双生児の互いをあまりにも愛しすぎる関係が、一人の女性のために変化し、壊れていく姿が戦慄をもって描かれているというところでしょうか。


双子の兄弟をジェレミー・アイアン一人二役で演じますが、これが凄い!
何も喋らなくても、弟なのか、兄なのか分かってしまう。彼らの内面を見事に演じ分けているんですよね~。
うまい役者さんですよね。

二人にやがて訪れる破滅‥。断ち切り、解放されたいと思う気持ちの奥で、やはり一体でありたいと思う二人。
壮絶で物悲しく、ある意味美しいと思えるラストが印象的。

クローネンバーグの作品の中では異質な感じを受けました。


手術シーンで術衣、患者を覆うシーツ等が真っ赤です。普通はありえませんね。
えも言われぬおどろおどろしさで、観るものを威嚇してしまうのもクローネンバーグらしいところでしょうか。


★★★★☆