しまんちゅシネマ

映画ノート

ブリキの太鼓


1979年(西ドイツ/フランス)監督:フォルカー・シュレンドルフ  原作:ギュンター・グラス出演:ダーヴィット・ベネント/マリオ・アドルフ/アンゲラ・ヴィンクラー/ハインツ・ベネントダニエル・オルブリフスキー/シャルル・アズナヴールアンドレア・フェレオル【ストーリー】舞台は1924年、国際自由都市だったダンツィヒ。オスカル (Oscar) はドイツ人の父とカシューブ人の母との間で生まれた。ナチスを信奉する父、従兄と浮気を重ねる母、そしてオスカルの眼前で起こる醜悪な事態の数々に失望したオスカルは3歳の誕生日に成長を止めることを決意する。オスカルは3歳の誕生日に貰ったブリキの太鼓を叩き続け、嫌なことがあると奇声をあげてモノを破壊する。オスカルはいくつになっても3歳の姿のまま成長しない。そして時代は変わり、ナチスが台頭して……。
■感想
気になっていた作品でしたが、やっと鑑賞しました。
いやー、、びっくり。ものすごい毒です。



冒頭、ダンティヒのジャガイモ畑。警察に追われ逃走途中の男が、女のスカートの中に隠れ、追っ手をまく。
スカートの中でうごめく様子。女が声を上げ。。。
なんと女は妊娠していた。そして生まれたのがオスカルの母アグネス。
やがてアグネスも大人になり子供を授かる。

母アグネスの体内に宿る胎児。その目つきのなんとも不気味な事。
そうしてこの世に生まれでた子供はオスカルと命名され、母は3歳の誕生日に太鼓をあげると約束する・・・。

とまあ、しょっぱなから驚きの映像です。


やがて3歳になり約束通り母から太鼓を買ってもらったオスカルですが
周囲の大人の汚さに嫌気がさし、自ら成長を止めてしまいます。

オスカルを演じたダーヴィット・ベネント。この時12歳らしいんですが、3歳から20歳というとんでもない演技です。
嫌な事があると奇声を発しモノを壊すオスカル。少年キャリーですね。見開いた目が普通じゃない。



さて、なぜオスカルが自らの成長を止めようとしたのか。

これは時代背景が大きく関係しているようなんですが、ナチスドイツが台頭して来る時代。
オスカルの父親はドイツ党員、母と不倫を続ける伯父(おそらくはオスカルの本当の父)はポーランドの郵便局局員、
おもちゃ屋さんのユダヤ人が迫害されたりと、オスカルの周囲は混乱に満ち、街は荒れ果てようとしています。

大人は汚い、戦争は無意味だ。そんな意味があるようです。

オスカルの周囲で死にいく人々。まるでオスカルが最後の審判者のように、きっかけをつくる描き方。

性行為にエロさは感じないものの、時々オスカル自体がエロさを醸し出すのです。



オスカルの不気味さ、時々挟まれる映像のグロさに引きそうになるものの、子供の視線で観る事の意義を考えさせられる作品でもありました。


ラストシーン、小さな義理の弟(実の息子?)を腕に抱きながら、
「3歳になったらブリキの太鼓をあげるね。成長を止めたかったらその方法も教えてあげる」と呟くオスカル。

汚れた大人にまみれる事なく、純粋な目で世界を見るように。。そんな思いがあるように感じました。




★★★★☆