しまんちゅシネマ

映画ノート

告発のとき


オスカー特集14日目。 主演男優賞候補 トミー・リー・ジョーンズ


またまた主演男優賞に戻ってみました。
告発のとき」でノミネートされたトミー・リー・ジョーンズ。やっぱり上手いわ~。

2007年(米)監督・脚本:ポール・ハギス出演:トミー・リー・ジョーンズシャーリーズ・セロンスーザン・サランドンジョナサン・タッカージェームズ・フランコフランシス・フィッシャージョシュ・ブローリンジェイソン・パトリック【ストーリー】2004年11月1日。息子のマイクが軍から姿を消したとのニュースが軍から父親であるハンクに伝えられる。軍人一家に育ったハンクは、息子の無断離隊は信じられない。息子が帰還したであろうフォート・ラードに向かうハンク。地元警察の女刑事が捜索に協力し、一歩一歩事実に近づいていくのだが、そこには父親の知らない息子の「心の闇」が隠されていた。
■感想
これは米プレイボーイ誌に掲載された実際の事件が元になっています。イラク戦争から帰還した兵士が失踪し、父親自身の捜査によって犯人が告発されたと言う悲惨な事件だそうです。

それはイラク戦争における兵士の恐るべき実態が明らかになるものでもあり、誰もがタブー視するもの。
それを映画にしようと乗り出したのは「クラッシュ」のポール・ハギスであり、クリント・イーストウッドの制作への協力があり、映画化が実現したのだそうです。


もうね、本当に衝撃的な作品。
失踪した兵士の父親、ハンクを演じるのがトミー・リー・ジョーンズ
彼は退役軍人であり、20年間の軍生活に誇りをもって生きてきた人でしたが、長男を戦争でなくし、
今また、一人残された次男がいなくなる‥。

ハンクが捜索を開始して、まもなくマイクは悲惨な姿で発見されるのです。。
マイクの死の原因を探るうちに、やがては衝撃的な事実にたどり着くことに‥。




告発のとき」という邦題は、いかにもこの「事件」の告発を意図したものになってるんだけど、監督は兵士の心の中に潜む闇の部分にスポットを当てているんでしょう。それは原題が「IN THE VALLEY OF ELAH」であることからも分ります。
これは、劇中シャーリーズ・セロン演じる刑事の弱虫な幼い息子におとぎ話として語られる聖書の中の物語ですが、
おとぎ話の主人公の勇気と弱さを戦争を闘う兵士の心に重ね合わせてのタイトルだと思います。
告発のとき」なんていう法廷ものみたいなタイトルにせず、そのまま「エラの谷」で良かったんじゃないかな^^;

とにかく兵士たちの心の闇が明らかになってくる後半からは、涙が止まりませんでした。
イラクに派兵された兵士たちは、同じく戦地で闘った父親世代の戦争とは異なるストレスの中にいるのですね。
極限状態にある彼らは、いつしか人間らしい感情を失ってしまっているのでしょう。‥悲惨です。

一人息子を亡くした哀しみを味わうと同時に、ハンクが対峙しなければならなかったものとは‥。


複雑な心境を静かな演技で演じたきったトミー・リー・ジョーンズは流石です。
それまで誓ってきた国への忠誠心が揺るいでいくさまを、国旗の掲揚にたとえた作りもお見事。
途中、展開の遅さが気になる部分もありますが、誰もが避けていた内容を映画にした勇気に拍手。

しかしながら、この作品に対する評価はA~Fまでと様々です。
愛国心の強い人、イラクで闘う兵士たちを家族にもつ人たちには許せない内容に違いないですね。
ユーザー評価の低さ、その内容に映画への反撥が見え隠れしています。

そういう意味でトミー・リー・ジョーンズの受賞は快挙ですね。
キングが選ぶトップ10では昨年の10位にランクイン。



日本上映は初夏だそうです。必見ですよ。



★★★★☆