しまんちゅシネマ

映画ノート

ブラック・ブック


2006年(オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギー)監督:ポール・ヴァーホーヴェン出演:カリス・ファン・ハウテン/トム・ホフマン/セバスチャン・コッホ/デレク・デ・リント/ハリナ・ラインワルデマー・コブス/ミヒル・ホイスマン/ドルフ・デ・ヴリーズ/ピーター・ブロック【ストーリー】1944年9月、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。美しいユダヤ人女性歌手ラヘルは、ナチスから逃れるため一家で南部へ向かう。しかし、ドイツ軍の執拗な追跡にあい、ついには彼女を除く家族全員を殺されてしまう。その後、レジスタンスに救われたラヘルは、ユダヤ人であることを隠すため髪をブロンドに染め、名前をエリスと変えて彼らの活動に参加する。そしてナチス内部の情報を探るため、ナチス将校ムンツェに接近、彼の愛人となることに成功するのだが…。
■感想
今週はスパイもので攻めちゃいます。

ナチスドイツ占領下のオランダ。
元歌手のユダヤ人女性ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)は、ドイツ軍の捜索を逃れるため一家で南部に向かう途中、家族を目の前で殺害されてしまいます。命からがら逃走し、レジスタンスの一味に救われたラヘルは、エリスとしてドイツ将校に近づき、ドイツ諜報組織に侵入することに成功。彼女の復讐が始まる‥というお話です。

女スパイとして敵に近づくというのは「ラスト、コーション」で観たばかりだったので、どうしても比べてしまうところがありました。

両親を目の前で殺されたラヘルがナチスを怨み、復讐の気持ちを持つのは勿論理解できます。
でも、ラヘルはあまりに強すぎたなぁ。

失うものなどない、捨て身の強さなのかも知れませんが、スパイを受け入れるのもかなりスムーズ。
態度もいつも堂々としていて、潜入してのスパイ行為に伴う緊張感とか葛藤があまり感じられなかったのですよね。
冒頭で、ヒロインの「その後」の姿が描かれていたので、危険な目にあっても死なないという安心感があったかも。
いずれにしても、あまりヒロインに共感することのないまま、物語を観てしまったような気がします。

本作は、そういう葛藤というよりも、時代に翻弄された人々の欲望と裏切りが中心に描かれていたのでしょうね。

近づいたドイツ人将校ムンツェを演じたのは、「善き人のためのソナタ」のセバスチャン・コッホでしたが、髪の色がブラウン系だったこともあり、一見別の人に見えました。本作での彼は物腰も柔らかく、ドイツの諜報機関で働きながら、ユダヤ人の殺害を良しとせず、良心をもった人物として描かれています。

ヒロインもそんな彼に惹かれていくわけですが、その思いは、最後の最後になってようやく伝わりました。

衝撃的な映像や、少々色っぽい映像も交えながら、なかなかに見応えのある作品ではあったと思いますね。
ナチスの迫害にあうこの時代のユダヤ人の哀しみと執念は伝わりました。

ただ、個人的には、思ったよりも心に響かなかったかな。
やはりヒロインが強すぎたからかしら。

終盤のヒロインが命の危険にさらされたシーンで、チョコレートを食べればいいのに!って思っていたら‥。。
そこは個人的にウケました。

色々に伏線がはってあるのは面白かったですね。


★★★*☆