しまんちゅシネマ

映画ノート

フィクサー


2007年(米)監督:トニー・ギルロイ出演:ジョージ・クルーニートム・ウィルキンソンティルダ・スウィントンシドニー・ポラックマイケル・オキーフ/デニス・オヘア/ジュリー・ホワイト/オースティン・ウィリアムズ/    ジェニファー・ファン・ダイク/メリット・ウェヴァー/ロバート・プレスコット【ストーリー】ニューヨークの大手法律事務所ケナー・バック&レディーンに所属するマイケル・クレイトン。公に出来ない案件を裏で穏便に処理する“フィクサー”を長年務めている彼は、かつての弁護士職に戻るタイミングを失い、問題山積の私生活でも、ついには従兄弟が抱えた8万ドルにも及ぶ借金を肩代わりする羽目に陥っていた。そんな中、巨大農薬会社U・ノース社に対する3000億円の集団訴訟でU・ノース社の弁護を担当していた同僚のトップ弁護士アーサーが、原告との大詰めの協議の最中、突然服を脱ぎ出すという奇行に出てクライアントを困惑させてしまう。そこで上司から事態の収拾を任されたマイケルだったが、やがてアーサーがU・ノースを敗北に導く決定的証拠を掴んでいることを知ってしまう。一方、U・ノース社の敏腕女性弁護士カレンもこの緊急事態に対処するため秘かに行動を開始するが…。

黒く塗りつぶせ! ロンドン・タイム誌100選! これまだ行くよw

■感想
弁護士事務所に所属する“もみ消しのプロ”マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)。

この作品は「フィクサー」として生きる男の正義と苦悩を、緊迫感たっぷりに描いた社会派サスペンスです。

いや~、これは面白かった!

まず驚くのが「フィクサー」の存在。
大手の弁護士事務所に所属する彼の仕事は、公に出来ない案件を闇で処理すること。

ある日、大手の薬品会社との仕事を一手に引き受ける同僚のトップ弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)は
薬品会社の訴訟を敗北に導く決定的な証拠を掴み、精神的に困惑し奇行に走る。

事務所からアーサーの収拾を任されたクレイトンが、事件に巻き込まれていきます。

恐ろしいのは「悪を見て見ぬ振り」するだけではなく「悪を手助けする」人々の存在。

製薬会社の人間も、会社の弁護をする弁護士たちも、与えられた仕事を全うすることにしか考えが及ばない。
製品のために命を落とした人たちのことなど、虫けら同然‥というよりも、全く眼中にないのです。

まずアーサーが、そしてクレイトンが、この事実に直面し、葛藤、として正義に向かって行動を起こしていくのです。

これ時間軸が前後します。そのため構成的にわかりにくいと感じた人も多いのではないでしょうか。

私も前半は「なんだか置いていかれそう‥」と不安になりました。

でも、中盤から全てが見え始め、冒頭のクレイトンの表情の裏には、こんな思いがあったのかというのがわかるとき、、
胸の高鳴りを覚えるほどに作品にのめり込んでしまいました。

とにかくジョージ・クルーニーがカッコいい!

彼が切なく苦悩する姿って、あまり観たことがなかったような。
だから余計にズッキューンです。夜明けのうす明りの中、静かに馬を見つめるその表情。
その内なる思いが切なくって、、これもう個人的にノックアウトでした。

しかも借りたものはきっちり返す!(お金のことだけじゃないですよ(笑)
物事にきっちり始末をつける、その心意気が最高に粋!なんです。

ルーニーオスカーノミネートも納得。アーサーを演じたトム・ウィルキンソン助演ノミネートでしたね。
結局獲ったのは製薬会社側の女戦士カレンを演じたティルダ・スウィントン。見事に助演女優賞ゲットしました。

そもそも「悪」とは思えないカレンがどんどん「悪」を重ねる実態には身震いする思いでしたが、
犯罪シーンで「え?あの人が?」というようなことって良くあることで、仕事に邁進するあまりに、
自分がどんなに恐ろしいことをしているかさえ自覚できない、そんな人間の実態を見た気がします。


世にはびこる悪に驚愕し、サスペンスな展開にドキドキし、正義にすっきり。ヒューマンドラマとしても見応えたっぷり。
作品賞、脚本賞、監督賞にノミネートされ、オスカー戦線を賑わしたのも納得の作品でした。お薦め!



★★★★*