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映画ノート

キリング・フィールド


1984年(イギリス)監督:ローランド・ジョフィ出演:サム・ウォーターストン/ハイン・S・ニョール/ジョン・マルコヴィッチジュリアン・サンズ   クレイグ・T・ネルソン/ビル・パターソン/スポルディング・グレイ/グレアム・ケネディ/パトリック・マラハイ   ド/ネル・キャンベル【ストーリー】1973年。カンボジアでは、アメリカが後ろ楯するロン・ノル政権の政府軍と反米の革命派ゲリラ“赤いクメール”との戦闘が激しさを増していた。その頃、内戦を取材するため現地を訪れていたアメリカ人ジャーナリストのシドニーは、現地の新聞記者であり通訳兼ガイドを務めるディス・プランを雇い、共に取材をこなしながら絆を深めていた。しかし“赤いクメール”の勢力拡大に伴い、外国人ジャーナリストにも身の危険が迫り、ついにカンボジアを後にすることに‥。

80年代プチ映画祭り 第5弾!

■感想
80年代には、ジャーナリストの目から観た、社会派な問題作も多く映画になっているようです。本作もその一つ。
原作者は、映画の中でもサム・ウォーターストン演じるアメリカ人ジャーナリストとして登場するシドニー・シャンバーグ。著書がピューリッツァ賞を受賞しています。

タイトルになっている「キリング・フィールド」は、この時代、ポル・ポト率いるクメール・ルージュに多くのカンボジア人が殺害された刑場跡の俗称なんですね。まさに「殺戮の場」。

とにかく臨場感溢れる映像に圧倒されます。
勢力をもったクメール・ルージュは完全な共産主義社会を目指し、反乱への恐れから大量虐殺を実施。
殺害された人の数は200万とも言われてますが、定かではないようです。
少年少女たちが機関銃を構え、大人を監視する世界にもゾッとするし、同じ国民を殺すために地雷を大量に埋め込むシーンも哀しい。医者や教師などの知識人を見つけては殺害した事実は、後のこの国の復興を困難にしてしまっているわけで。。
内戦を描いたものってどれも悲惨だけど、これは格別でした。



現地通訳のディス・プランを演じたハイン・S・ニョールさんは、、実際に4年の間、クメール・ルージュの元で強制労働に就かされた経験を持つ人で、映画初出演のまったくの素人だったというから驚きです。

オスカー受賞のその迫力は、修羅場をくぐり抜けて来た人間だから演じることができたというのも確かでしょうが、
彼は、この事実を世界に伝えることを使命のようにも感じていたのかもしれませんね。
後半はジャーナリストたちが、それぞれ自国に帰っていった後、クメール・ルージュに捕われ労働するプランが、屍の重なるキリング・フィールドを超え、この地を脱出するという、サバイバルが描かれます。
そしてついにジャーナリストと再会を果たすというストーリー、これも実話なんですね。

二人の絆を描いた感動作と紹介するものが多いですが、個人的には二人の絆というのはあまり感じなかったな。
勿論、ジャーナリストの力で家族を国外に脱出させることができ、プランは家族との再会のために頑張れたというのも確かでしょう。プランもクメール・ルージュに捕われたジャーナリストを命乞いをして救ったこともあり、互いになくてはならない存在ではあったのでしょうけど。

あまり政治的な説明のない作品なので、未見の方は、この時代のカンボジアの知識を多少入れてご覧になることをお薦めします。
断片的かつ表面的にしかカンボジアのことを知らなかった自分が、またまた恥ずかしくなりました。



この映画の評価って、映画の出来、うんぬんではないですね。
ただただ、プランの精神力に驚き、内戦の惨状に言葉を失った作品でした。

★★★★☆