しまんちゅシネマ

映画ノート

BOY A


2007年(イギリス)監督:ジョン・クローリー出演:アンドリュー・ガーフィールド/ピーター・ミュラン/ケイティ・ライオンズ/ショーン・エヴァンスアルフィーオーウェン/シヴォーン・フィネラン/ヴィクトリア・ブレイジャー/スカイ・ベネット【ストーリー】イギリス、マンチェスター。かつて“少年A”と呼ばれた青年は24歳となり刑務所から出所した。“ジャック”という新しい名前を与えられ、過去を隠して新しい生活を始める。ジャックは大人になってから初めて体験する外の世界に戸惑いつつも、ソーシャルワーカー、テリーのサポートを受けながら、少しずつ社会に溶け込んでいく。職場では親しい仲間も出来、やがて人生初めての恋も経験するジャックだったが…。

罪から逃れることはできないのか。。『BOY A』

■感想
ちまたではオスカー候補の作品が次々に公開になっていて、観に行きたいのだけど、
しつこい風邪を2週間も引きずってて、咳き込み始めると止まらないので劇場に行けない。ガッビーン(´Д⊂

本当はオスカー特集したかったんだけど、急遽【イギリス映画特集】に変更です。

今日観たのはブリティッシュ・インディーズから、『BOY A』。
少年の頃に犯罪を冒し、BOY Aと呼ばれ世間を騒がせた青年が、刑期を終え、社会に出るところから物語は始まります。

名前を「ジャック」と決め、過去の自分を捨て、新たな人生に一歩を踏み出そうとする24歳の青年。
新しい名前を与え、職を斡旋し、ソーシャルワーカーが指導援助する。
イギリスの少年犯罪者をフォローアップする仕組みが、確立していることを思わせます。



子供の頃の経験しか持たないジャックを、ソーシャルワーカー、テリーは、父親のように見守り支えるのですが、
実は彼には離婚した妻と暮らす息子がいて、その息子とは心が通じ合えないでいたのでした。

映画は今と過去の映像が交互に映し出され、ジャックの冒した過ちも徐々に分かって来ます。
しかし彼の罪を知る衝撃よりも、「なぜ世間は彼を許してあげないのか」という気持ちの方が強くなるんですね。

記憶にあるのが、神戸で起きた少年の事件。
犯人の写真が雑誌「フォーカス」に掲載され、その雑誌が回収されるということがありました。
人々は彼の犯罪を嫌い、その後どうしているかに興味を持つ。
ネット全盛の今、ひとたび情報が流れると止めることができませんよね。


ジャックを演じるのは『大いなる陰謀』で優秀なのに勉強しない学生を演じたアンドリュー・ガーフィールド
新しい経験に歓びを見出す一方で、周囲の人々を騙しているという罪の意識に苛まれる。
時に少年の顔をのぞかせながら複雑な青年の内面をナイーブに演じ切ったガーフィールドの演技が光ります。
これから大いに活躍していくでしょうね。まさに逸材と思わせる繊細で瑞々しい演技でした。

ソーシャル・ワーカーのテリーを演じたピーター・ミュランも素晴らしい。
仕事に打ち込む一方で、自分自身の家族とは溝を作ってしまい、息子への対応がわからないと言う複雑な役柄です。

ラストには衝撃が走り、心を揺すぶられました。
色んなことを考えさせられる作品でした。

これはお薦め。今公開中かな。


★★★★☆