しまんちゅシネマ

映画ノート

マン・オン・ワイヤー(仮題)


2008年(イギリス)監督:ジェームズ・マーシュ出演:フィリップ・プティ音楽:マイケル・ナイマン
■感想

祝オスカー・ノミネート 長編ドキュメンタリー賞候補 マン・オン・ワイヤー(仮題)!

今日ご紹介するのはサンダンス映画祭で審査員賞&観客賞受賞の他、前哨戦の多くを制覇し、
オスカー最有力候補とされる、イギリスBBC製作のドキュメンタリーです。

これは1974年にワールドトレードセンターの2つのビルの間で綱渡りを行ったフランス人フィリップ・プティのお話。

フィルムはフィリップさんがトレードセンターを渡る実際の映像、本人および仲間たちのインタビュー、計画の詳細、前日の準備の様子を映し出す映像などで構成されています。

17歳の時に歯科医の待合室で、ツインタワーが間もなく完成するとの新聞記事を読み、
自分のなすべきことを悟ってしまったというフィリップさん。
地上450mのところに張ったワイヤーの上を命綱なしに歩くなんて、まさに自殺行為なのですが
彼はその情熱を抑えることが出来ず、25歳の誕生日にツインタワーを制覇するまでの数年間、
仲間を募り、綿密に計画し準備を進めていったのです。

おじさんになった彼がインタビューに答えている訳なので、ここで死んじゃいないとは思うものの
ツインタワーの間を45分間に渡って数回往復する、当時の映像はとにかくドキドキものです。

失敗すれば勿論命はありません。
空を見上げる人、タワーから見守る仲間。
緊張が走る中、綱の途中でリラックスした表情で微笑む姿に、なぜか涙が出てしまうんですよ。



命知らずのパフォーマンスですが、計画準備は実に念入りに行われています。
フィリップさん自身がジャーナリストに成り済まし、工事の作業員にインタビューする様子など何気にコミカル。
ワイヤーを張る準備のためツインタワーに機材を運び込むのも違法行為なので、見つからないように秘密裏に行われるんですが、これはもうサスペンス映画を観てるようです。今ならテロリストとみなされちゃいますね。

911で崩壊してしまったツインタワー。フィリップさんの思いはどんなものかしらと思ったけれど
フィルムでは特に言及していませんでした。

時にコミカルに、時に悠久の中国を思わせるようにゆったりと、そしてある場面ではサスペンスフルに。
シーンを彩るナイマンの音楽が効果的に場面を盛り上げます。

ロットントマトのトマト指数100%の本作は、
もしも空を飛べたなら‥という人間の夢の実現を見るよう。

心動かされる作品でした。


★★★★*