しまんちゅシネマ

映画ノート

こわれゆく女


1974年(米)監督:ジョン・カサヴェテス出演:ジーナ・ローランズピーター・フォーク/マシュー・カッセル/マシュー・ラボルトー   クリスティーナ・グリサンティ/ニック・カサヴェテス【ストーリー】神経症気味の妻を持て余しながらも、深い愛情から一人で家庭を切り盛りする、労働者階級の中年男。彼は市のベテラン水道工事員として、職場でも慕われている。突然の水道のトラブルでしょっちゅう家を空ける夫に、妻の気持ちは次第に昂ぶり、ついに狂気の世界へ足を踏み入れる。
■感想
ジョン・カサヴェテスが、妻と友を主演におき、壊れゆく夫婦の関係を描く家族ドラマです。

市の水道局に勤める夫は、急な呼び出しに家を空けることもたびたび。
幼い子供を3人抱え、一人で家を守らなければならない妻にとって、それは大きな負担であったはず‥。



いつからか妻の様子がおかしい。同僚からも指摘されるようになった。
妻は頭がどうかしたのか? いや、そんなはずは無いと自分に言い聞かせる夫。
妻を愛してはいるものの、面倒なことを考える余裕もないというのが正直なところか。

そうこうする内に、妻の異常性は日々増すことになり、夫もこの事実に直面せざるを得なくなります。


ジョン・カサヴェテス監督って、こんなリアルな作品を撮る人だったんですね。
日常に潜むストレスから、次第に壊れていく妻を演じたジーナ・ローランズの凄まじいこと!

そもそもこの映画は舞台用に書かれた作品だったようですが、
舞台で演じるのはあまりに過酷と、ジーナの反対があって映画になったそうです。

確かに、毎晩毎晩、舞台でこれを演じたら、身も心もボロボロに疲れ果ててしまいそう。

夫役にコロンボで有名なピーター・フォーク
こわれゆく妻を持て余しながらも、愛情でなんとか支えようと奮闘してはいるものの、夫とてやはり疲れる。
あげく、ついつい怒鳴ってしまうので、妻はなおさら興奮するばかりという空回り。

それでも限りなく母を愛する子供たちがいるからこそ、家族は一つになっていけるのだと希望をのぞかせる一方で
夫の言動に不安要素を残す終わり方も、なんだかニクいな。




夫の長年の仕事仲間の描き方が、リアリティがあってしかも温かくて良かったですね。
イタリア語で歌われる伸びやかな歌声は、緊張の中のオアシス的な癒し効果がありました。


狂気の演技でありながら、ジーナは時々ハッとするほど瑞々しく美しい。
そんなところに監督の愛情を感じちゃったな。

ピーター・フォークそっくりの娘ちゃんには思わず笑った^^


★★★★*