しまんちゅシネマ

映画ノート

半月~ハーフムーン~


ヴェネチア映画祭、今年監督賞にあたる銀の獅子賞を受賞したのは
イランの女性監督シリン・ネシャット監督でした(『Women Without Men』)。

イランやイスラエルの映画ってあまり日本に紹介されませんが、最近映画祭をにぎわす傾向ですよね。
この機会にちょっと注目してみようかなってことで、今日は2006年製作のイラン映画を観てみました。


2006年(イラン)監督・脚本:バフマン・ゴバディ出演:イスマイル・ガファーリ/アラー・モラッド・ラシャティアニ/ヘディエ・テヘラニ/ハッサン・ブールシラジ   ゴルシフテ・ファラハニ

ヴェネチア映画祭特集 7本目 イラン映画『半月~ハーフムーン~』

■感想
酔っぱらった馬の時間』『亀も空を飛ぶ』のバフマン・ゴバディ監督の作品です。

イランに住むクルド人の主人公は、伝統的な音楽の演奏家で、クルド人の間では英雄的な人物。
フセイン崩壊後のある日、主人公はイラククルド人自治区に住む人々のために、37年ぶりにコンサートを開くことを決意。
元弟子たちを集め、おんぼろバスに乗り込んで、イラク国境の自治区を目指します。

主人公の年老いた音楽家マモの、コンサートにかける意気込みはただ事じゃないんですね。
途中、予言者のお告げを聞いたという弟子の一人に旅を止めるように忠告されても、聞く耳なし。
自治区に暮らす人々に音楽を蘇らせ、夢と希望を与えたい。そんな思いがひしひしと伝わります。



彼らの音楽には女性ボーカルが必須なのに、イラン政府は女性が男性の前で独唱することを禁じているらしく
道中の検問では、女性シンガーは床下に身を隠さなければならない始末。

彼らのコンサートの成功は、クルド人の意気を高めることになるからなのか、ついには楽器も壊され
シンガーを失い、、絶体絶命。
果たして一行は無事にコンサートを開くことが出来るのか。


過去や現在、そして未来の幻想的な映像が入り乱れ、やや分かり辛い部分はあるものの
適度なユーモア(時にかなりブラック)と緊張感で緩急のバランスをとりながらのロードムービー

積雪の山岳地域。こんな厳しい自然の中で他国に遠慮しながら生きなければならない民族の哀しさも感じました。
映像や音楽も印象的で、女性シンガーを得るために足を運ぶある村での女性たちの歌声と映像は圧巻です。

日本では未公開ですが、2006年東京フィルメックス映画祭に出品されたようですね。

ラスト。コンサートの開幕は映像では見せません。拍手から始まる美しく哀しい歌声に深い余韻が残りました。

★★★★☆