しまんちゅシネマ

映画ノート

9<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~


         クリスピン・グロー ヴァー/マーティン・ランドー/フレッド・タタショア

■感想
映画で妄想世界の旅! 11本目!
せっかく『2001年宇宙の旅』で、人間の究極の進化を目撃したところなので
今日はさらに進化したはずの未来の旅に出てみました。
 
目覚めると世界は終わっていた。
なんとも衝撃的なキャッチコピーです。
 
冒頭、年老いた手が麻袋でできたお人形に最後のひと針を入れ、双眼鏡風の目を付け・・・
お腹はジッパーという奇妙ないでたちのそのお人形が、研究室の片隅で目を覚まします。
背中には「9」の文字。でも彼にはここがどこで、自分は何なのかが分からない。
たどたどしい足取りで歩き始め、彼が見たのはまるで戦争のあとのような荒れ果てた街並。
この後「9」は「1」~「8」と番号のついたお人形たちに遭遇し、機械でできた獰猛なモンスターと戦うことに。
 
見えてくるのはおろかさによって滅亡してしまう人間の姿。
戦争なんて誰もしたくないと思っているのに、愚かな考えをもつ一人の人間によって
脅威にさらされる状況にある今、この物語にも身近な怖さを感じてしまいます。

これは2006年にオスカーにノミネートされた短編を監督自身によって長編に作り直したものだそうで
トップに貼り付けた動画がオリジナルのショートフィルム。
 
お人形にキャラクターを与え、言葉を話させたことで、
ここで何が起きてるのか、お人形たちは誰が何のために作られたのかがクリアになりました。

「9」の声を担当するイライジャ・ウッドには特に感じるところはないけど
マーティン・ランドークリストファー・プラマーのうまさが光り、深みを与えます。
ティム・バートンを感動させたその映像もすごくいいですが
個人的にはバトルシーンに目新しさがなく、中だるみしたかな。
仲間を救うために前向きな「9」に先導され、自分たちの進む道を模索していくというプロットはいいし、
終盤に感動を運んでくれるシーンでの「死」の表現もすごく好き
 
だけど、人間が滅亡してしまった世界ではあまりにも遅すぎる
私たちが過去や人形から学ぶ事柄も、もう一つ新鮮なものが欲しいところでした。
それでもショートフィルムは監督の大学の卒業制作だったというから驚きです。
監督のこれからの活躍には大いに期待ですね。