しまんちゅシネマ

映画ノート

白いリボン


2009年(ドイツ)
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:クリスティアン・フリーデル/レオニー・ベネシュ/ウルリッヒ・トゥクール/フィオン・ムーテルト 
    ミヒャエル・クランツ/ブルクハルト・クラウスナー


■感想
カンヌ特集 1本目
さて、今月一本目は昨年(2009年)のカンヌを制した鬼才ミヒャエル・ハネケの『白いリボン』を。
 
舞台は第一次世界大戦勃発前のドイツ北のプロテスタントの村。
この村で、ある日、村の医者が落馬し、大怪我を負うという事故が起こります
家に続く道で2本の木の結ばれたワイヤーに、馬がつまづき転倒したのです。
 
その事故を契機に、村ではいくつかの事故や事件が立て続けにおきます。
この村は何かがおかしい。。

村びとの誰もが互いを知り尽くしている小さな村。
この中に犯人がいるのです。でも誰が何の目的で?
 
この映画がハネケらしいと思うのは、これは謎解きの探偵ものではないということ。
物語は、かつてこの村で教師をしていた一人の老人の回想の形で語られ
彼はこの村で起こった事件を語り、感じたことを語ってはいるものの
事件をどこにも結論付けてはいないのです。

物語が進むうちに見えてくるのはこの村にまつわる陰湿な体質。
土地の殆どを所有する領主によって厳格に支配されるこの村で
領主をはじめ、有力者は規律を乱す子供たちを虐待しています。
 
タイトルにもなっているホワイト・リボンは
罰を受けた子供が、清らかな心に戻るべく反省中であることを示すために
腕に白いリボンを巻くことを強制されているものでした。

冒頭に流れる、子供たちの歌う賛美歌が美しく印象的。
凛とした子供たちが見せる異様な団結と不穏な動きはとても不気味で
このあたり『光る目』を思い出しました。
 
領主は村人に収穫を与え、医者は病気を治し・・
しかしながらその陰で愛人を汚い言葉でののしり、子供に性的虐待を与えていたりと人の側面はさまざま。
誰にも動機や鬱屈した心があるところから、この村で起きている事件も一筋縄ではいかず
ハネケはあえて犯人は複数であることのみを示唆し、人間の心の奥底を描くことに徹したのでしょう。
 
全てを語らないがゆえにとても考えさせられたし
美しいモノクロ映像にも「洗練されたハネケ」を感じる作品でした。
日本公開は秋!