しまんちゅシネマ

映画ノート

A Prophet:預言者 (原題)


 
2009年(フランス)
監督:ジャック・オーディアール
出演:タハル・ラヒム/ニエル・アレストリュプ
■感想
フランス映画特集一本目は、昨年のカンヌ グランプリ
アカデミー前哨戦で外国語映画賞に多くノミネートされた作品です。
刑務所を舞台に、フランスの他国民国家の問題や、犯罪の実情を見せるクライムサスペンスであり
社会派な一面をもつ作品です。
 
【ストーリー】
フランスに暮らす19歳のアラブ人のマリク(タハル・ラヒム)は
警察に抵抗した罪で6年の実刑を受け収監される。
刑務所はコルシカ人マフィアであるシーザー(ニエル・アレストリュプ)が仕切っていた。
シーザーはマリクに目をつけ、アラブ系囚人の一人を殺せと命じる
やらなければ自分が殺されることを知ったマリクは、命令に従い男を殺害
以来、シーザーはマリクを認め、外との連絡手段として犯罪を依頼するようになる。
 
 
フランス映画際の一本目は、私の思うフランス映画らしくない一本かもしれません。
 
主人公のマリクは19歳で刑務所暮らしをはじめるのですが、
おそらくは移民でジプシーのような生い立ちなのでしょう
学校も11歳までしか行っておらず、読み書きも殆どできず、アラブ人という自覚もない根無し草な存在
3年の刑期を過ぎた頃、模範囚として外出が許可されるようになると
シーザーは組織の麻薬密売などの使い走りとして、マリクを利用するようになります。
マリクにすれば、お金を得ることが目的
ところが、異人種であるマリクがシーザーの下で働くことに驚くのは、アラブ人たち
自分のアイデンティティになんの執着もなかったマリクは、次第に人種を意識するようになるんですね。
 
マリクが刑務所内で初めて人を殺すシーン
口の中にてかみそりを隠し、頚動脈を切るという作戦
練習のときから口の中を切りまくり、痛くて観てられません。
この殺害相手、実はマリクに言い寄るホモだったんですが
何も知らず殺される前に、マリクの将来を案じたりと、同種族ならではのシンパシーを見せ
マリクは戸惑うんですね。
 
タイトルの意味は預言者
というのも、この男を殺して以来、彼はマリクの前に姿を現すようになり
この描写がブラックユーモアで笑えます。

マリクに犯罪を依頼するシーザーも哀れな男でした。
彼は終身刑で、生涯刑務所で暮らす男
それでも自分の力を信じ、組織のために、働くわけですよね
マリクを利用はするものの、本当は誰かとつながりが欲しかっただけかもしれない。
 
最後にはシーザーとマリク、大きく道を分かつ姿が印象的でした。
 
思えば昨年は『瞳の奥の秘密』『白いリボン』とこれで映画賞を分け
どれがとってもおかしくない戦いでしたね。
多くの移民を抱える国フランスの縮図とも言える、見ごたえのある作品でした。
 
今のところ日本公開の予定はなし・・
 
 




 
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