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映画ノート

ライフ・デュアリング・ウォータイム/Life During Wartime(原題)


2009年(アメリカ)
監督:トッド・ソロンズ
出演:シャーリー・ヘンダーソンアリソン・ジャネイキアラン・ハインズアリー・シーディポール・ルーベンスシャーロット・ランプリング
  
■感想
トッド・ソロンズ監督の代表作『ハピネス』(98)の続編となる作品。
第66回ヴェネチア映画祭(2009)で脚本賞を獲得しています。
 
『ハピネス』はアメリカの中流家庭の3姉妹を中心に、姉妹を取り巻く人々を描くシニカルなドラマでした。
印象に残ってるのは、次女ヘレンに卑猥な電話をかけては自慰にふけるフィリップ・シーモア・ホフマン演じる変態アレンね。
物語の核となるジョイ、トリシュ、ヘレンの3姉妹のうち、
一番堅実と見えた長女トリシュの精神科医の夫ビルはストレスを溜め込み、
息子の同級生の男の子をレイプしちゃった。
 
本作はまさにその続編で、登場人物のキャラクターは同じだけど、演じる役者は全員違っています。
前作から10年
3姉妹はそれぞれに抱えたジレンマに向き合いながら過ごしてきた
冒頭、3姉妹の末っ子ジョイ(シャーリー・ヘンダーソン)とアレン(マイケル・ケネス・ウィリアムズ)は結婚記念日を祝っている。
でもどうやらアレンの変態癖は完全に直っていないことが分かり、ジョイはショック
ジョイを慰める二人の姉妹とのやり取りは相変わらず痛い
長女トリシュ(アリソン・ジャネイ)は夫と離婚
12歳の息子ティミーと幼い妹クロエには服役中であることを隠し、パパは死んだと言っている
そんなトリシュは新しい恋人といい関係に。
その頃、ビル(キアラン・ハインズ)は刑を終え出所してくるのだが・・・

前作は、普通に見えて普通じゃない人々が、彼らなりに幸せを模索する姿を描くものだったけど
続編である本作は、より社会派なテイストが加味されてますね。
やたらと出てくるのが「許す」「忘れる」という台詞
人は過ちを犯した人を許すことが出来るのか、
許さなくても忘れることが出来るのか、云々。
911を忘れることが出来るのか、テロリストを許すことが出来るのかということにまで話が及ぶのですが
ユダヤ教の13歳の成人式を迎えようとするティミーにそれを語らせることにも、意味があるかも。
 
終盤ティミーはある過ちを冒し、許しを請うことになります。
色んな「許せないこと」を抱えていた彼が、人の痛みも分かるようになる瞬間。
でもそのシーンの後ろに見えたのは・・・
世の中厳しいなぁと思うところもある痛いドラマでもあります。

ところで、前作でジョイに振られ自殺したアンディが
本作では幽霊という形で登場するんですが
それを演じてるのが『ピーウィーの大冒険』のポール・ルーベンスなのが ちょっとウケたw
 
シニカルさは、それなりに楽しめるものの
個人的には『ハピネス』ほどのインパクトも感動もなかったのだけど
きっと作品の意図するところをちゃんと掴めてないからですね。