しまんちゅシネマ

映画ノート

スリ(掏摸)


 
ツイッターで何度もタイトルを目にすると、なんか気になってきます。
ってことで、『スリ(掏摸)』観ました。
スリ(掏摸) (1960) フランス
監督:ロベール・ブレッソン
出演:ピエール・レマリ/マルタン・ラサール/マリカ・グリーン/ピエール・エテックス
 
【ストーリー】
貧しい大学生ミシェルは、ふとしたきっかけで、自分にスリの才能があることを発見する。
一度は刑事に捕まったものの、証拠不十分で釈放されるや、再び他人の財布を狙い出す。
やがてその手口は、仲間を引き込んだ組織的なものになっていった……。(Allcinemaより)

スリに手を染める孤独な青年の姿を描く、フレンチ犯罪ドラマ。
ロベール・ブレッソン監督作品 初鑑賞でした。

貧乏学生のミシェル(マルタン・ラサール)は、ふとしたことからスリに手を染めるようになります。
成功は自信となり、プロの手ほどきもあって、その腕を上げ
彼は、ストイックに淡々と犯行を重ねるんですね。
 
モノクロ、ドキュメンタリー風でありながらスリリングに展開するところは
同じ年に製作されたジャック・ベッケル作品『穴』に通じるところがありました。
『穴』で実際の脱獄者を使ったのと同様、
本作でも本物のスリを登場させているとのこと。流行だったのか?
出演者のほとんどが素人というのも手伝って、スリのシーンは緊張!
 
貧しくはあるけれど、若い学生でもあり、
その気になれば、スリなどしなくても将来のある仕事ができるんじゃないの?
と思ってしまうところだけど
一旦は、更生しようとしながら、結局もとのスリに戻ってしまう描き方に
犯罪に取り付かれる人間の弱さを感じますね。
常識的なモラルの欠如した世界。

でも、彼を変えるのが、同じく不幸を背負いつつ生きてきたヒロイン(マリカ・グリーン)との出会い。
二つの孤独な魂が互いを求め合うとき、
無表情を貫いてきたミシェルが、格子越しに安堵の表情を見せるのね。
それまでドラマを極力排していただけに
このラストシーンには、心を揺すぶられました。