しまんちゅシネマ

映画ノート

バーバー


 
コーエン兄弟の『バーバー』観ました~。
バーバー(2001) アメリ
監督:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン
出演:ビリー・ボブ・ソーントンフランシス・マクドーマンドジェームズ・ガンドルフィーニ
アダム・アレクシ=モール/マイケル・バダルコ/キャサリン・ボロウィッツ/リチャード・ジェンキンス
 
主人公のエドビリー・ボブ・ソーントン)は妻の兄の営む床屋に働く無口な男。
ひょんなことから妻(フランシス・マクドーマンド)の浮気を疑い始めた頃
ドライクリーニングのベンチャー企業を始めようとしている客の話に心を動かされる。
共同経営者となるための資金を調達すべく、
エドは妻の浮気相手をゆすることを思いつくが・・・



冴えない床屋があることをきっかけに人生の歯車を狂わせていくという
コーエン兄弟お得意の悲喜劇です。
モノクロの映像がクールで美しく、陰影がときにサスペンス性を高めることにも成功してますね。
 


ビリー・ボブ・ソーントン演じる床屋のエド
妻の浮気を察知しても、義兄のおしゃべりにうんざりしてても、顔色を変えるでもなく
静かに煙草をふかしてやり過ごす男。
その姿勢は彼の周りで次々に事件が起こり始めても変わりなく
淡々と運命を受け入れていく姿はこっけいでいて哀しくもあります。
 
原題は『THE MAN WHO WASN'T THERE』
時代背景となる1949年は、戦後の賑わいが増す一方で
米ソが核兵器開発競争に突入し、ハリウッドでは赤狩りが行われた時代。
そんな中でのエドの存在はまさに初めから存在しなかったほど という描き方でしょうか。
登場する刑事たちが妙に人情的だったところにちょっと笑ったのだけど
それはエドとの対比だったのかしら。
 
劇中、エドが子供の髪に視線を落とし
「髪の毛はどうして伸びるんだろう。身体の一部にも係らず、埃と一緒に捨てられてしまう」
と嘆くシーンが印象的。
落ちていく人生に身を任せるような、ある意味達観した主人公だけど
(立派な父親がついてるのにw)若いスカヨハの将来を気にして
立派なピアノ教師のところまで連れて行く
そんな一面も持ち合わせていることに微笑ましさを感じました。
まぁ、それもあんなことに繋がる という皮肉もいとおかし ですね(笑)
 
渋くてオフビートなビリボブがぴったりはまっていて、好きな作品でした。