しまんちゅシネマ

映画ノート

光のほうへ


 
みなさんのところで知って、気になってた作品、ストリーミングで観ました。
幼い頃のトラウマを抱えた兄弟の過酷な人生を描く、デンマーク発ヒューマンドラマです。
 
光りのほうへ (2010) デンマーク
監督:トマス・ヴィンターベア
出演:ヤコブ・セーダーグレン/ペーター・プラウボー/パトリシア・シューマン/モーテン・ローセ

デンマーク社会保障制度が発達していて、幸福度は世界一なんだそうです。
この映画の中でも、システムが整っていることが垣間見えるのだけど
潜在的な問題に対しては、必ずしもその制度がいきわたってはいないんでしょうね。
 
この映画に登場する兄弟は、アル中の母親のもとでどん底の暮らしをしています。
二人には赤ん坊の弟がいるのだけど、母親は育児放棄のため
ポスターのまだ子供の二人が粉ミルクを盗んだりして、育てているのね。

赤ちゃんの名前も二人でつけて、それはそれは可愛がっている。
けれども不幸にもその赤ちゃんが突然死。
兄弟二人は深い傷を抱えたまま成人し、別々の道を歩くことに。
そんな兄弟が、母親の死を機に、再会を果たすことになるんですね。
 

 
刑務所帰りの兄ニック(ヤコブ・セーダーグレン)と、
息子と二人暮しながら麻薬中毒の弟(ペーター・プラウボー)。
親から与えられた不幸を乗り越えるのは難しいんだと聞いたことがあるけど
この兄弟はまさにそれ。
再会後も、二人をあらたな不幸が襲うことになるんですね~。
後半まで本当にやるせない気持ちになります。
 

アル中の母親を見て育ったのに、どうして麻薬に溺れてしまうのか。
でもそこが人間の弱さ。
心から息子を愛し、自分のふがいなさを誰よりもわかっている。
なのにやめられないところに麻薬の怖さがあるし、
デンマークの社会問題でもあるのでしょうね。
現実の厳しさを感じるところです。
 
登場する子供たちがみんな天使みたいに可愛いし
慈しみのまなざしで子供たちをみつめる、兄弟の表情が凄く良かった。
いかに赤ん坊を愛していたかがわかるエピソードにも感動。
 
死んでしまった赤ん坊の弟が、「光のほうへ」と導いてくれるようなラストに
少しほっとすると同時に、胸が熱くなりました。