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映画ノート

アルトマンの描く不思議世界『三人の女』


美女特集異端な作品になりますがw
今日は先日観たロバート・アルトマン『三人の女』があまりに面白かったので
みんなと感想を共有したいと思い、ここに書いちゃいます。




三人の女
1977年(アメリカ)
原題:3 Women
監督:ロバート・アルトマン
出演:シェリー・デュヴァル 、 シシー・スペイセク、 ジャニス・ルール、 ロバート・フォーティエ、 ルース・レルソン 、 ジョン・クロムウェル、 パトリシア・レズニック、 デニス・クリストファー


カリフォルニアの老人リハビリ施設にピンキーという娘がやって来て療養士の見習いとして働き始める。指導にあたったミリーは気どり屋で周囲から無視される存在だったが、ピンキーだけは彼女を慕い、やがて謎めいた絵を描く女の経営するアパートでルームメイトとして同居生活を始める。ある日、ふとしたことからミリーになじられたピンキーは自殺未遂し、以来人格が一変し・・。

1977年製作の作品ですが、今年になってソフトがリリースされたようですね。
これ不思議な映画だった~。




老人リハビリ施設での治療風景から始まる本作
映像に似あわぬこの不気味な音楽に初っ端から困惑。
するとカメラの移動した先にはキャリー顔のシシー・スペイセク
ホラーを髣髴とさせる物語の幕開けにおのずと期待が高まります。

テキサスから出てきたばかりのピンキーは、ホテルで寝泊りをしているのだけど、仕事から帰るやパンツを脱いで洗面台で洗う。服はミシンで全部手作りという実質のない不思議な暮らしぶり。

そんな彼女は教育係として仕事の指導をしてくれるミリー(シェリー・デュヴァル)を気に入り、ルームメイト募集にも申し込むのだけど、果たしてミリーに傾倒していくピンキーは、あることから自殺を図る。しかし意識が回復した時には、ピンキーはミリーも真っ青ないけ好かない女に一変してしまっているんですね。



ベルイマン『ペルソナ』にインスパイアされたという本作の本当の解釈は私にはわかりません。
『ルームメイト』のように、憧れのルームメイトの真似をするうちに、自分がその対象に一体化してしまうというのはありがちだけど、本作の場合、施設を訪れたピンキーの視線の先にはすでにミリーがいて、しかも凄い形相で彼女をみつめている。
自殺後ミリーとピンキーの性格が逆転したように見えること
ピンキーが両親の存在すら覚えていないこと
ピンキーとミリーは同じテキサス出身であることなど 謎ばかり
ミリーの言葉を誰も聞いていないところを見ると、ミリーは最初から存在していないのかなとも思えてきたり。。

タイムカードの押し間違いに一体化の始まりを暗示しているのが面白い。
印象的なのはピンキーが自殺した当日、彼女が服にこぼしたトマスソースと、第三の女であるアパートオーナーの出産に立ち会ったミリーに付着した血液で、この二つのアイテムが私の中でリンクした。
あれは別人格が生れ落ちる瞬間だったのではないか
そう思うと、これは二重人格を描く映画だったのかな。

あ、三重人格・・ もっとか。
多分見た人それぞれで解釈が異なるでしょうね。

ミリーを演じたシェリー・デュヴァル、ピンキーを演じたシシー・スペイセク
二人のホラー対決とも言うべき演技がみもの
解釈が難しいだけに後を引く作品です。

★★★★☆