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映画ノート

スピルバーグ『リンカーン』

今日はスピルバーグ監督、ダニエル・デイ=ルイス主演の『リンカーン』を観てきました。





リンカーン
2012年(アメリカ)
原題:Lincoln
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ=ルイスサリー・フィールドデヴィッド・ストラザーンジョセフ・ゴードン=レヴィット
ジェームズ・スペイダーハル・ホルブルックトミー・リー・ジョーンズ






奴隷制度の廃止、南北戦争終結に向け尽力したリンカーンの最期の4ヶ月を描く本作は、
アクションをほぼ封印し、会話中心の政治劇な仕上がりになっていたのにはちょっとビックリ。
最初はデイルイスのクリソツ振りに驚き、次第に彼の描くリンカーンの人柄に惹きつけられます。
黒人が奴隷でしかなかった時代に、彼らに自由と人としての尊厳を与えたリンカーンの功績は大きい。
大統領再選の行われる今年にこれが上映されることの政治的な思惑は知りませんが、
純粋に大命の大切さや人としての尊厳について考えさせられる映画になっています。




ついに議会を通過する段では、わかっちゃいるけどドキドキするし通過の瞬間は感動です。
デイルイスは、その一言に誰もが耳を傾けてしまう強く優しきリーダーを、リンカーンがのり移ったかのような演演技で魅せてくれました。やっぱり凄い役者だわ。
共演者でリンカーンに次いで存在感があったのはトミー・リー・ジョーンズ
他、脇を固める演技陣も加齢臭漂う大物揃いでしたが、貴重な若者、リンカーンの息子役のゴードン君が出てくると、スクリーンに新鮮な風が吹くから不思議(笑)

ところで、映画の感想を書くにあたり、スピルバーグのインタビュー動画を見て、感じ入るところがあったので、以下はそこからの情報を元に語ってみました。

スピルバーグの映画が変わった
40年も映画を撮り続けているのだから、そのスタイルが変わってくるのも不思議ではないですが、スピルバーグはもはやアクションに興味がなくなったのだそうで、本作ではアクションはほぼ封印。
ペクタクルな戦争映画を期待すると当てが外れます。
では何故変わったのか。それはおそらく撮りたいものの軸が他にシフトしたのでしょうね。
彼の中で一番変わったのは父親への思い。
母親を捨てた父親を長年憎んでいたスピルバーグは、近年になってその誤解を解くことになり、父親への思いが変わってきたのだそうです。父親不在の映画から父親が活躍する映画へ。その最初の作品が『宇宙戦争』です。

強く正しい父親像
リンカーン』にはリンカーンの二人の息子が登場しますが、幼い息子とリンカーンが寄り添う姿がとても穏やかに描かれていて印象的です。強く正しい父を尊敬し慕う息子。スピルバーグはその子に自分自身を投影したんでしょう。本作は父と息子の物語でもあり、スピルバーグからお父さんへ、尊敬と感謝が込められた作品なのだと思います。ちなみに父君は95歳、お元気です。

映画終了時に、久々に会場に拍手が起きました。
じわじわと感動を盛り上げる手腕はさすがスピルバーグ

日本公開は4月19日

★★★★☆