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映画ノート

ハートレス




DVDスルーにもならないのかなと思ってたジム・スタージェスの2009年の主演作『ハートレス』
今月公開されるようなので観てみたら、なんと面白いじゃないの。
ハートレス(2009)イギリス
原題:Heartless
監督:フィリップ・リドリー
出演:ジム・スタージェスクレマンス・ポエジー、 ノエル・クラーク、 ジョゼフ・マウル、 ニキータ・ミストリー、 エディ・マーサンティモシー・スポール、 ルーク・トレッダウェイ
日本公開:5/11

10年前に父を亡くし、母とロンドンに暮らすジェイミー(ジム・スタージェス)は顔にハート型の大きなアザを持つ青年。兄のスタジオで働き、父から譲り受けたカメラで廃墟の撮影を趣味とするジェイミーが現像したフィルムには悪魔のような姿をが写りこんでいた。
ある夜、不気味な叫び声の先を追ったジェイミーは振り向いたギャングが写真と同じ、怪獣のような顔であることに驚愕。
ニュースではギャングの暴挙が報道され、ギャングはお面を被っているとの目撃談が語られる。しかし、その隣で一人の少女が「あれはお面なんかじゃない」と話すのを聞き、それらが人間ないことを確信。
そんなある日、父の10回忌の夜に、ジェイミーはギャングに襲撃され愛する母を失った。
哀しみに暮れるジェイミーの前にpapa-Bと名乗る悪魔が現れ・・

ストリートギャングが社会問題となるイーストロンドンを舞台に、ギャングに母を殺され、悪魔と契約してしまった青年の苦悩を、現実と幻想を交え描くホラーサスペンス。
契約によりアザが消えたジェイミーが美しいティア(クレマンス・ポエジー)と恋におちるさまを描くラブストーリーでもあります。

 この映画はジェイミーの妄想と現実が混在する話ですが、最大のポイントは「亡き父への思い」でしょう。
と言うのも、彼は父の遺した「Nikon」を愛し、父を尊敬している半面で、顔のアザは「父が自分を愛するあまり顔にキスしてできたもの」と語っていて、愛する父とアザを結びつけるネガティブな思考を持っている。
正直ジェイミーが悪魔と契約を交すくだりなど、「何じゃこりゃ??」で、途中まではB級ホラーな様相なのだけど、ラストの10分になって、色んなシーンが意味をなしてくる。ジェイミーが浄化される瞬間、それまで感じていた疑問や違和感が消え、その後は哀しみと感動、二つの異なった感情が噴出しました。

終わってみれば、とんでもなく面白い映画でした。ただ、スタージェス君の演技が陰鬱すぎるのが残念。
それと、ボーっと観てると面白さに気づかない映画かもしれない。

母や甥っ子との会話などにも、後の種明かしに繋がるものがあるので、注意深く聴いておきましょう。
悪魔の名前がPapa-Bであることや、Papa-Bと出会うのが父の生まれ育った跡地だということにも注目。
ニュースに登場した女の子の顔も覚えておいてくださいね。
ただ、女の子が何故インド人風なのかとか、いくつかの疑問が残り、追求すればきっと意味があるんだろうなと思わせる。何度も観て楽しめる作品かもしれません。

監督はフィリップ・リドリー。カルト的な人気を誇る監督らしいのだけど過去作は未見です。
中流れる音楽の作詞も共同で手がけ、歌自体もストーリーを理解するのに役立つ形。
ちなみに挿入曲の殆どをスタージェス君が歌ってます。