終戦のエンペラー
第二次世界大戦後の日本を舞台に、戦争の真実に迫る歴史ミステリーです。
戦争責任を問うハリウッド映画だと思ったので、公開時に二の足を踏んでしまいましたが、
天皇と天皇を思う日本人の心を真摯に描いていて、とても興味深く観終えました。
終戦のエンペラー(2012)日本/アメリカ
原題:Emperor
監督:ピーター・ウェーバー
出演:マシュー・フォックス、 トミー・リー・ジョーンズ、 初音映莉子、 西田敏行、 羽田昌義、 火野正平、 中村雅俊、 夏八木勲、 桃井かおり、 伊武雅刀、 片岡孝太郎、 コリン・モイ
日本公開:7/27~公開中
マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)から命を受けたフェラーズ准将(マシュー・フォックス)が、関係者からの聞き取り調査を行うという形で、戦争の真実に迫っていきます。
最終段階として、天皇の戦争責任について答えを出そうとするのですが
そこから見えてくるのは、日本人の天皇への忠誠と献身。国民は天皇のために命をかけ闘ったけど、実際には天皇は自分で何かを決める自由など持たず、祭り上げられたシンボルでしかなかったということ。
苦しいときに、人は心の支えとなるものが必要で、日本人にとってそれが天皇だったことに違いないんでしょう。一方、その心を間違って利用すれば、戦争というとんでもない過ちに繋がる。これは神のみ名のもと聖戦を繰り返す宗教に近い危険を孕むものだということも感じさせます。
原爆投下のシーンから始まり、アメリカが日本の平和的復興に尽力したという描き方に
傲慢さを感じるという向きも多いけれど、戦争における過ちを責めるのではなく
センシティブな世界情勢の中の日本の復興を公平な目で見つめているのは、
ハリウッド映画とはいえ、監督がイギリス人であることも大きいのかもしれません。
また、製作の奈良橋洋子さんは枢密顧問官、関屋貞三郎氏のお孫さんとのことで
皇室の敷地を撮影現場に使われてるのは、彼女の力によるものも大きいのかな。
世界で活躍するプロデューサーという点でグローバルに作品を見つめるとも感じます。
それでいて、中村雅俊演じる近衛文麿に、侵略を進める心情を語らせているのが
とりあえずそこだけは言っておきたいという本音みたいなものを感じて、ちょっと小気味よいw
関屋を演じるのは闘病中だったと思われる夏八木勲さん。
マッカーサーに「天皇の影を踏んではいけない」など、接見時の注意事項を伝えるシーンは、天皇の威厳を感じると同時に、一種コミカルでもあり 関屋の真面目で誠実な人柄が伺えるところも好きだったなぁ。
演出として面白いのは、天皇の姿を終盤まで見せず、神のごとくミステリアスに描いていること。
かのマッカーサーでさえ、畏怖に近い面持ちで天皇と接見したわけですね。
天皇(片岡孝太郎)登場のシーンはドキドキさせますが
現れた天皇が小さくて親しみやすいお顔だったりするのも
偶像とのギャップを感じさせるようで面白い。
それでもやはり天皇のお言葉には重みがあり、国民を思う心にはジンとします。
フェラーズ准将も実在の人物ですが、日本人女性アヤとのロマンスはフィクションです。
史実と違うということで反論も多いようだけど、アヤを演じた初音映莉子さんも素敵で
堅いだけの話にならなかったのは良かったし、何よりも、戦争で敵として戦う相手も、血の通う人間であるというのを思い起こさせてくれました。
西田敏行さんはじめ、名優たちが英語を見事に操るのにも感心。
ハリウッドでの評価は散々だけど、日本人の心が分からないと
感じるところのない映画になってしまうかもだな。
私には胸にストンと入ってくる一本でした。
トラックバック一覧
1. 「終戦のエンペラー」は外国人の目から見た日本を描いていて面白くて見応えあり。
2. 映画「終戦のエンペラー」 2013年 監督ピーター・ウェーバー
- [アンダンテ あっち行って ホイ♪]
- August 23, 2013 00:00
- 終戦記念日も間近になって来ました 映画冒頭の原爆の投下シーン 何度見ても凍りつきます 本作はノンフィクションではなく あくまでもフィクションですが 挟み込まれるフィルムなどから 真実では?と 思わずとらえてしまいそうです 日比谷通りを
3. 『終戦のエンペラー』
- [京の昼寝〜♪]
- August 24, 2013 08:07
- □作品オフィシャルサイト 「終戦のエンペラー」 □監督 ピーター・ウェーバー□脚本 ベラ・ブラシ□原作 岡本嗣郎□キャスト マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、初音映莉子、西田敏行、 片岡孝太郎、中村雅俊、夏八木勲、桃井かおり