しまんちゅシネマ

映画ノート

オン・ザ・ロード

 

『道』から繋いで、今日は『オン・ザ・ロードビートニク作家ジャック・ケルアックが自身の体験をつづった「路上」を、
モーターサイクル・ダイアリーズ』のウォルター・サレスが映画化した一本です。
オン・ザ・ロード(2012)アメリカ原題:On The Road 監督:ウォルター・サレス 出演:
サム・ライリーサル・パラダイス(ジャック・ケルアック
ギャレット・ヘドランドディーン・モリアーティ(ニール・キャサディ)
クリステン・スチュワートメリールウ(ルアンヌ・ヘンダーソン
エイミー・アダムスジェーン(ジョーン・フォルマー)
トム・スターリッジカーロ・マルクスアレン・ギンズバーグ
ダニー・モーガン
アリシー・ブラガ
エリザベス・モス
キルステン・ダンストカミール(キャロリン・キャサディ)
ヴィゴ・モーテンセンオールド・ブル・リー(ウィリアム・バロウズ
日本公開:8/30
  ニューヨークに暮らす若い作家サル・パラダイスは父親を亡くした喪失感に苛まれていた。そんな彼の日常は、セックスとドラッグにまみれ、常識に囚われない風変わりなディーン・モリアーティとの出会いによって一変。やがてディーンとともに広大なアメリカ大陸を放浪する…。

製作総指揮のフランシス・フォード・コッポラが30年前に製作権を獲得し映画化を念願した作品がようやく公開になりました。
サレス監督でいくと決めてからも8年間の年月がかかったらしい。執念ですね。

主演に『コントロール』のサム・ライリー
奔放なディーンに触発され旅に出た若き作家サルが旅を通し経験したことを本にしたのが、
ヒッピーたちのバイブルともなった『路上』。

映画は、サルの視点で、ディーンに代表されるビートニク世代の若者の刹那的な日常を描き出します。
 
ディーンは自由を求めて熱狂し、何か自分を満足させるものが必ずあると信じて旅をする。
16歳の若妻メリールウ(クリステン・スチュワート)がいながら、カミール(キルステン・ダンスト)にも心魅かれる。
形に囚われないというと聞こえはいいけれど、あえて安住を拒むかのよう。

結局何に対しても責任を持つことをしないディーンは、自責の念にからてか次第に光を失っていく。
旅をしても本当に求めるものを見つけられないディーンの孤独が痛い。
安住することに不安を覚えるのは、心の支柱を持たないからなのか。
探しても見つけることが出来ないディーンの父親は、その「支柱」を象徴しているようにも思います。

 

旅を通し、やがて大人へと脱皮していくサルと、いつまでもそこにとどまるディーンディーンの後姿を見せるラストシーンでは、
その後に何があるのかを知っているだけに、涙が止まりません。

サム・ライリー演じるサルはケルアック自身。他にケルアックと交流のあった作家たちが描かれるので、
作家に詳しい方はキャストを参照して、誰が誰を演じてるのかをチェックしてるといいかも。

ヴィゴが『裸のランチ』のウィリアム・バロウズを演じていて、思わずその顔にゴキブリを重ねてしまった(汗)

 

キャスト中いいのは女性陣ですね。特にメリールウを演じたクリステン・スチュワートがいい。
彼女のキャリアに『トワイライト』シリーズはいらない。
インディーズ系の作品で魅力を発揮する女優さんだと思います。

ディーンを演じたギャレット・ヘルランドにはもう少しカリスマ的な魅力が欲しかった。
どこまでも続く道を横長の画面で見せる映像も美しく、土地土地にあった音楽も多様で面白く
その時々の感情を表現するのに使われる「言葉」を堪能するのも、この映画の楽しみ方のひとつでしょう。

いい映画でした。