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映画ノート

『ブランカニエベス』:白雪姫をモチーフにサイレントで描くダークファンタジー




賞関連、今日は先日発表されたヨーロッパ映画賞から
作品賞にノミネートされたスペイン映画『ブランカニエベス』を観ました。
有名闘牛士の娘として生まれながら、数奇な運命を辿ることになるヒロインの姿を全編モノクロ&サイレントで描くダークファンタジーです。
ブランカニエベス(2012)スペイン/フランス
原題:Blancanieves
監督:パブロ・ベルヘル
出演:マリベル・ベルドゥ / マカレナ・ガルシア/ダニエル・ヒメネス・カチョ/ アンヘラ・モリー
日本公開:2013/12・7
有名な闘牛士であるアントニオが闘牛に倒れ、ショックから妻は娘カルメンを出産、そのまま帰らぬ人に。事実を受け入れられないアントニオはわが子を拒否。祖母に育てられるカルメンだったが、祖母後、父に引き取られることになります。しかしそこで待っていたのは継母エンカルナによる苛め・・。

 『アーティスト』以来、モノクロ、サイレント映画が映画に新しい風を吹き込みました。
本作の面白いのは『白雪姫』というおとぎ話をモチーフにしていること。しかも1920年代のスペインを舞台に、闘牛士の娘の生涯を描く話にしたところがユニーク。でもしっかりとグリム童話の残酷性を持ち、ダークファンタジーとして描かれてるんですね。ちなみにタイトルのブランカニエベススペイン語で白雪姫の意。



 継母エンカルナを演じるのは『天国の口、終わりの楽園。』『テトロ 夜を殺した男』のマリベル・ベルドゥ。いつのまにこんなに美しく、しかも恐ろしくなったんでしょう(汗)父とカルメンが交流するシーンは、父を慕う少女の夢が実現する幸せな瞬間なのに、マリベル演じる継母の恐ろしさゆえ、幸せが一転、ただならぬ緊張感をはらんでくる。緩急のつけかたも素晴らしい。

カルメンマカレナ・ガルシア)はやがて美しい娘に成長。「鏡よ鏡・・」は出てこないものの、継母がこれを許すはずもなく、カルメンの運命はさらに翻弄される。お約束の7人の小人との出会いが、カルメンを闘牛に結びつけるところがうまい。でもカルメンが頭角を現せばさらに危険が迫ることになるというジレンマ。。





 モノクロでありながら、光と影を巧みに使った映像はにおいたつほどに美しく、フラメンコや闘牛シーンからは躍動感が溢れます。音楽の美しさも印象的で、芸術品を見ている感覚に陥るんですよね。

 ディズニー風のお姫様物語を期待すると痛い目に遭うかも。
手にしたと思った瞬間するりと零れ落ちる幸せ。小人の儚き恋・・
安易なフェアリーテイルからはかけ離れたラストシーンに、グリム童話の残酷さを見た思いです。