しまんちゅシネマ

映画ノート

尻に憑かれた男<未> B級エロなだけでない哲学を感じるが・・





ブラジル発のちょっと変わった映画観ました~。
尻に憑かれた男(2007)ブラジル
原題:O Cheiro Do Ralo / Drained(英題)
監督:エイトール・ダーリア
出演:セルトン・メロ/ロウレンソ・ムタレリ/パウラ・ブラウン/ファビアーナ・ググリ
日本公開:未公開

質屋を営むロウレンソは客の持ち込む品に二束三文の値をつけ屈辱を味あわせる、ちょっと嫌な男。目下の悩みは事務所奥のトイレ排水溝からの悪臭。そんなロウレンソは、ある日ウェイトレスのお尻に魅了され、日々ダイナーに通うことになるが・・・。



日本未公開でもあり、あまり情報のない作品なんですが、KINENOTEではエロスにジャンルわけされていまして、ポスターもこんな↓



いや、確かにこういうシーンもあるんだけどねw
これだとどうしてもB級エロ映画にしか見えないけど、ちょっと違うんだよなぁ。

 主人公のロウレンソは、お気に入りのウェイトレスに「金を出すから尻を見せてくれ」などと言う、お尻フェチの変態男。映画はそんな主人公の非情な日常や変態振りを見せつつ、彼の辿る数奇な運命を描くもの。
シニカルでシュールな変態コメディと言ってしまえばそれまでですが、途中出てくるアイテムや顧客の言葉が意味深で、何か哲学的なものを感じるのですよ。

気になるところを挙げると、まずは配水管から臭うらしい事務所奥のトイレね。
臭いがどうにも気になって仕方ない主人公は、やがてその配水口をセメントで固めてしまう。
原題の意味は「排水溝からの臭い」だそうで、主人公にとっては封じ込めたり、開放したりするもの、すなわち内に秘めた欲望ということかな。

次のアイテムとしては、客が持ち込んだ義眼。
これを主人公は死んだ父が戦争で失くした目だと言うんですが、その真意は不明、というか多分あり得ない。
彼はこの目で大好きなお尻を見たり、排水溝を覗き込んだりする。

ほかには、いつも品物を持ち込む貧しげな少女。
彼女はまるで老婆のような裸体を披露しますが、あるシーンで彼女のことを「どんな顔をしていた?」と聞くと、目撃者は「悪魔のようだった」と言う。

これらのアイテムが妙に気になり、意味を追求したくなるのですよ。原作があるようなので機会があれば読んでみたい。ちなみに原作者は質屋のセキュリティ役で登場する赤い服を着たおじさんらしい。
映像にも独特の美があり、軽い気持ちで観たのに、思いがけずとり憑かれてしまいました。
主人公を演じるセルトン・メロの演技も可笑しいけど切実。
理解は及ばないながら、純愛と渇望、罪と罰を描く作品だったかなと思います。

お尻フェチの方必見(笑)