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映画ノート

her/世界でひとつの彼女





オスカー特集、今日はゴールデングローブで脚本賞を受賞、他にも作品賞、監督賞、主演男優賞などでノミネートが期待されるスパイク・ジョーンズ監督の『her/世界でひとつの彼女』を観てきました。
her/世界でひとつの彼女(2013)アメリ
原題:her
監督:スパイク・ジョーンズ
出演:ホアキン・フェニックスエイミー・アダムスルーニー・マーラオリヴィア・ワイルド
声の出演:スカーレット・ヨハンソン
日本公開:2014/6/28
手書きの手紙代行の仕事をする作家のセオドア(ホアキン・フェニックス)は、妻(ルーニー・マーラ)と別れ、孤独な日々を送っている。ある日、対話型のオペレーション・システムを導入したセオドアはサマンサという名の人工知能に魅かれていく。

 近未来のロサンジェルスを舞台に繰り広げられるユニークなラブストーリーです。
主人公セオドアが恋に落ちるのがなんと対話型オペレーションシステムの人工知能
でも最近の内蔵知能の発達をみると、これは遠い未来のお話じゃないと思ってしまいます。

先日も「日本食レストラン」について夫がipadのボイス検索をしてたんですが
日本食好き?」と訊くと「ごめんなさい、食べたことないの」
「どのレストランが一番好き?」には「選ぶのはあなた、私じゃないわ」などと答える。
冗談には冗談で返すのが面白くて会話が弾むんですよね(笑)
世の孤独な男性の中には、ひそかにこうした人工知能との会話を楽しんでる人いるんじゃないでしょうか。
しかもこの映画のサマンサの声はスカーレット・ヨハンソンなんですよね。
あのセクシーボイスで、しかも対話するほどに感情や感覚を学んでいくのだから男性にはたまらないでしょ。
でも、当然ながら人工知能であるサマンサに実態はない。さて二人の恋の行方は・・。

いや~、これは面白かった。
まずバーチャルに囲まれた主人公の暮らしぶりが楽しい。
自筆とは名ばかりに、コンピューターに向かって喋り、依頼者の自筆文字を認識させたであろう文字で手紙をプリントし送信する。こんな仕事も出てくるんだねぇ。
自宅のバーチャルゲームのキャラクターも可愛いくてね。しかもF文字たっぷりにセオドアに文句言ったりするんです。思えば、この映画で描かれる近未来描写は、何らかの形で相手の反応があるのが時代を反映しています。いまどきの若者がテレビを見ない理由に、テレビは一方通行で反応がないからという記事を目にしたけれど、煩わしい関係を拒絶しながらも、人は孤独ではいられない。

心配になるのは、バーチャルの世界で孤独も埋められるとしたら、人と人との繋がりなんて必要なくなるんじゃないの?ということ。この映画のひとつのテーマでもありますね。

オレンジを基調にしたポップな色合いが、近未来をシンプルで暖かいものにしています。
胸ポケットに入れられたデバイスのカメラからのサマンサ目線も楽しい演出。
脚本も手がけるスパイク・ジョーンズのオリジナリティとイマジネーションに感服。



共演にエイミー・アダムスルーニー・マーラ
愛する妻を失う主人公の傷心が丁寧に描かれるからこそ、セオドアを応援せずにいられない。
ホアキンの表情から溢れ出る恋の喜びに、ともに胸ときめかせ、リアルな痛みに共感し、本当の恋を見つける姿に心温まりました。素敵な作品です。