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映画ノート

『チャプター27』:レトー君G・G助演男優賞おめでとう~!

昨日はゴールデン・グローブ賞の授賞式でした。
結果はこちら





助演男優賞は、『ダラス・バイヤーズクラブ』でおネエを演じたジャレッド・レトー君が受賞!!
おめでとう~。G・Gの助演は共通部門のため、ある意味主演よりも難関。
オスカーへの期待が高まりますね。



ということで、今日はレトー君の2007年の主演作品『チャプター27』を観ました。
チャプター27(2007)カナダ/アメリ
原題:Chapter 27
監督:J・P・シェファー
出演:ジャレッド・レトーリンジー・ローハン/ ジュダ・フリードランダー/ アーシュラ・アボット/ ジャンヌ・フルニエ/ マシュー・ハンフリーズ
日本公開:2007/12/15
ジャレッド・レトーが、ジョン・レノンを殺した男マーク・チャップマンを演じた作品です。
太ったチャップマンを演じるために、30キロも増量したことでも話題になりました。

こちら、逮捕時の本物のチャップマン氏



ファットスーツを着用せず実際に増量に挑んだレトー君はインタビューで、「太った姿をさらすことで、周囲から蔑みの視線を感じたり、自分自身が卑屈になった」と言っていて、この経験がチャップマンの心理に近づくことに繋がったのは間違いなさそう。




本作はチャップマンがジョン・レノン殺害に及ぶまでの3日間を描くもの。
上の新聞の見出しにもあるように、彼は3日間ジョン・レノンの住むダコタ・ハウスの前をうろつき、ジョンを待ち、一度はレコードのジャケットにサインまで貰ってるんですね。
ジョン・レノンのファンであるチャップマンがなぜ犯行に及んだのか。

映画はチャップマン自身のボイスオーバーで、その時々の心情をあぶりだすスタイル。
「何故」の部分が明確に示されているわけではないけれど、
彼が全てに絶望し、イラつき、何かの壁を突破しようとしてることは分かります。
ライ麦畑でつかまえて』の愛読者である彼は、自分の絶望を本の主人公に重ねた。
というより、主人公ホールデン・コールフィールドになりきっていたのは、彼が本に
ホールデン・コールフィールドへ ホールデン・コールフィールドより」としたメッセージを書き込むことからもわかります。すなわち、チャップリンはコールフィールドの目を通し世間を見て、世界に復讐したかったのでしょう。
劇中、いくつかの偶然を運命と捉え、殺害を必然的なものと確信していく様子が不気味。
ダコタ・ハウス前で出会ったジョン・レノンのファン、ジュードを演じるリンジー・ローハンの目を通しても、チャップマンの異様さが伝わります。
一方、チャップマンが、犯行を阻止する心の声と葛藤する様子をみると、頭の中ではまだ迷っていたことも窺えます。それでも瞬間的に負の意識に囚われ行動に出る。それが人間でもありますね。

監督のJ・P・シェファー は若干28歳、初監督ながら「そのとき」に向かう緊張を描ききる手法はたいしたもの。85分と短い時間だけど、精神的に疲弊してしまうほどでしたから。

印象的なのは、それまで目の周りを黒く塗って、陰鬱な表情を演出していたのに
ラストシーン、獄中のチャップマンはクマもなく表情もすっきりなところ。
ジョン・レノンを殺すことが彼の再生に繋がったのだろうか。
ちなみにチャップマンは今も服役中ですが、今年にも仮出所の可能性はあるとのこと。
出てきたら殺してやろうと思うジョン・レノンファンは多いでしょうね。

犯人についての情報も持たないままでの観賞だったけれど、「ライ麦畑でつかまえて」の影響も少し理解でき、犯行は許しがたいものながら、人の心の闇という普遍的なものには共感するところもありました。
終始心がざわつき、終盤はホラー並に緊張させられたのも映画として面白かった印。

レトー君は増量もさることながら、ジョン・レノンを殺した犯人を演じるというのは
勇気が要ったんじゃないかな。役者魂を感じます。これからも期待!!