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映画ノート

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌




オスカー特集
今日はコーエン兄弟の新作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』を観てきました。
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013)アメリ
原題:Inside Llewyn Davis
監督:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン
出演:オスカー・アイザックキャリー・マリガンジョン・グッドマンギャレット・ヘドランド/ F・マーレイ・エイブラハム/ ジャスティン・ティンバーレイク
日本公開:2014年、初夏
60年代にニューヨーク・グリニッチ・ヴィレッジのフォーク・シーンで活躍したデイヴ・ヴァン・ロンクをモデルに描く音楽ドラマです。


カンヌ審査員特別グランプリや、全米批評家協会賞などでも作品賞やオスカー・アイザックが主演男優賞を獲ってますが、オスカーでは主要部門から外れ、撮影賞と録音賞だけのノミネートというのは、今回の一番のサプライズ。でも観終わって思うのはちょっと人を選ぶかなということ。
ボブ・ディラン以前のフォークソングが主役なので、観るものの思い出指数が多分に加味されるかもしれません。



舞台は1960年のニューヨーク。
オスカー・アイザック演じるルーウィン・デイヴィスは、グリニッジ・ヴィレッジのライブ・ハウスで細々と歌うフォーク歌手。彼は住む所も定まらず、不安定な暮らしに甘んじているのだけど、あることでお金が必要になり、いつにない行動を起こす。映画はその一週間を描きます。

デイヴィスが頑張ろうとすればするほどに、あぁあ~な災難が降りかかり、
気の毒だけど笑ってしまう。そのあたりにコーエン作品らしい面白さがありました。





しかし今回の主役は音楽。
12歳からギターを弾いているというオスカー・アイザックのパフォーマンスは本物で、美声を披露してくれます。
ほぼ即興で演奏するジャスティン・ティンバレークとのセッションも楽しい。
キャリー・マリガンもデュオのフォークシンガーということで歌を聴かせてくれますが、その甘い歌声とは裏腹に彼女の内面は怒りに満ちている。
デイヴィスに発するどんだけ~な暴言が受けます(笑)



この映画、構成も変わっていて、正直どこから始まってどこで終わるのか分からない(笑)
そのトリッキーな構成に一役買うのが猫の茶トラ先生。この子がかわいくて猫好きにはたまりません。
まぁ、とるに足りない一週間ではあるのかもしれないのだけど、映画を観終わったとき、
主人公がこの間に得た「愛すべきものたち」のことを思い、なんかジーンとしました。

 この翌年ボブ・ディランが登場し音楽の世界を変えていくんですね。
インターネットからのダウンロードが主流になり、レコード店で音楽を探す人がいなくなったように、時代ともに音楽もスタイルを変え、取り残されるものは廃れていくのが運命。
この映画に登場する伝統的なフォークソングも、ボブ・ディランの登場で姿を消すことになる。
ひとつの時代が終わる革命前夜の哀愁を感じます。
グレイッシュなニューヨークの映像とともに、アイザックの歌声が心に響く作品です。

トレーラー張っておきますね。サントラも気に入って聴いてます。