しまんちゅシネマ

映画ノート

ヴィスコンティ『白夜』




アラスカと言えば白夜ということで
今日はルキノ・ヴィスコンティの『白夜』を観ました。
あれ、でもどこが白夜だったの?(汗)
白夜(1957)イタリア
原題:Le nottei bianche
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:マルチェロ・マストロヤンニマリア・シェルジャン・マレークララ・カラマーイダーク・サンダース



港町で青年マリオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は橋上でたそがれる一人の娘ナタリア(マリア・シェル)を見初める。一年前に再会を約束した恋人を、毎日同じ場所で待っているというナタリア。
彼女に惹かれていくマリオだったが・・・




 マストロヤンニがいいわぁ。
冒頭、道で出会った野良犬の後を追ってまでw「お腹すいてるのか?」と訊くマリオ。
この登場シーンから、ちょっとお節介だけど心優しく、でも寂しい男であることが伺える。
案の定彼はナタリアに恋しながらも、彼女の応援をしようとする。
でもできなくて、そんな自分が情けなくて葛藤するんですよねぇ。
そんな経験、誰にもあるんじゃないかしら。

 恥ずかしながらヴィスコンティは『ヴェニスに死す』しか観てなくて、退廃的で美しい世界観に心酔しながらも私には少し敷居が高いかしらと思っていたのだけど、本作ではそんなことを微塵も感じさせない親しみやすさがあるのね。

 マリオと出会い、翌日再会の約束をしてしまったナタリアが
思わせぶりになってしまった自分を反省し、マリオに会わないことを決める。
彼を避けるために鶏小屋に隠れておばさんに叱らるシーンに爆笑してしまった。
「卵を産まなくなるから出ておくれ」
「人と待ち合わせしてるの」
「鶏小屋でかい?」ってね(笑)
ヴィスコンティ映画でこんな会話を聞くことになるとは。



 爆笑といえば、ダンスシーンも最高でね。
ダンスホールでミュージカルのような見事なダンスを披露する ダーク・サンダースも最高だけど
場の雰囲気に乗って踊りだすマストロヤンニのへっぽこダンスがまた最高w
ジャンプしながらのあれは、コント55号の欽ちゃんでしょ、←古っ!ww
ツボに嵌りまくりで笑ったわ~。



 なんてこと書くと未見の方にコメディと思われてしまいそうだけど
橋の袂に浮浪者風の人たちがいたり、街角に立つ娼婦の切なさが描かれていたり、
ナタリアの待ち人に複雑な事情がありそうだったり
さりげなく、時代の匂いを漂わせてるんですよね。
芸術的な面持ちも勿論あって、光と影のコントランスの効いたモノクロの映像や
曇りをぬぐった窓から見える光景やドアの演出、雪や雨といった自然までも美しく
全てが絵になり、大人の寓話の世界観を構築していますねぇ。

 最後に思いがけない結果が待ち受けているのだけど
冒頭ではつれない素振りを見せた野良犬が、ラストシーンではマリオに寄り添うようについてくる
切ないながらほのぼので、ジンワリと暖かい気持ちになりました。
こんなの観ると「映画が好きでたまらない!」と叫びたくなるね。